11-19 十一話目、終わり。
「? 私は構いませんが……いったいどちらへ?」
「どちら、っていうか……こっちこっち。すぐそこだよ」
「??? は、はい……?」
手招きすると、愛は慌てて駆け寄ってきた。俺はそのまま足を進める。
そして、十秒ほど。俺はある建物の前で足を止め、言った。
「ほい、着いたぞ。ここに寄って行きたかったんだ」
「こ、ここは……」
愛が見上げる先。そこにあった建物とは、建物全体に草だのつるだのが好き勝手に生えまくり、外壁は黄色く変色し放題。おまけにそこら辺中がぼろぼろに腐って……と、ここまで話せば思い出す人は思い出すことだろう。
一見すると、まるでゲゲゲなハウス。というか、ただの廃墟。……ここは、そう。死んだ俺の父さんがやっていた店(※詳しくは【#2,大切な、日。】参照)だ。
俺はそれを愛に、時間もないためにある程度掻い摘んで説明することにした。
「ここはさ、俺の父さんがやってた店なんだよ」
「亮さまの、お父さまが……」
「そうそう。と言っても、もう十年以上も前のことだけどな? ちなみにその父さん自身は、子どもが車に引かれそうになっている所にたまたま出くわしたらしくて、子どもを助けるために飛び出したのはいいんだけど、代わりに死んじゃったんだ。……ああ、でもそのおかげで、その子は――」
「右腕肘から先を切断、という重傷を負いながらも、一命は取り留めた……ですね?」
「ん? ……あ、ああ。言われてみればたしかに……母さんがそんなことを言っていた気がするな? 俺もそこまで詳しくは知らないんだ……け、ど…………」
……あれ???
「いや、ちょっと待てよ!」
思わず大声を上げてしまった俺は、しかしそのまま聞いた。
「愛、お前何でそんなことを知っているんだよ? だって……え? 息子の俺ですらが知らないようなことなんだぞ? それを、何でお前がそんなに詳しく……」
「……その子どもは…………」
と、その時だった。愛がゆっくりと口を開き、話し始めた。
「その、女の子は……一命を取り留め、退院した後。元々預けられていた親戚の家から、ある大きな家に引き取られることになりました」
「ひ、引き取られ……た?」
「……はい。入院、手術の費用。食費などの生活費。そしてその後にかかる学費などといったお金を、親戚の家ではとてもではありませんが、賄いきれなかった、という理由から、仕方なく引き渡したそうです」
す……愛は一歩前に出て、変わらずの口調で話した。
「……引き渡されたその家で、通常の学業を始め、女の子はたくさんのことを必死に学びました。掃除、洗濯、料理……片腕がないことなど関係ありません。できなければ、役に立たなければ、自分はきっと捨てられ、死んでしまう……それでは、見ず知らずの自分を助けてくれた方に申しわけない。そう思ったからです」
「……ま、愛。お前、それって……もしかして……!」
「……はい」
返事をして振り向いた愛は、にっこり、微笑んで話した。
「女の子の名前は、〝愛〟。……亮さま。亮さまのお父さまである倉田 良大さまは、女の子の……〝私〟の――」
〝命の恩人〟……です。




