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「それでは! 記念すべき我らの最初の一歩にして、最初のミッション! 入場ゲートの飾り付けを始めますか!」
――放課後、教室の左後方。俺の席の周り。
体育祭は再来週……すでに二週間をきっているということもあって、係を決めたのは今日の今日ではあったが、俺たちはさっそく係の仕事にとりかかることになった。
――のは、いいんだけど……。
「なぁ、ところで明?」
すでに教室には俺たち白乃宮チーム+下僕しかいない――そのため、明もいつものように高テンションで話している――状況だ。俺の役割分担は下僕ではあるが、今は普通に聞いた。
「飾り付けをやるのはいいんだけどさ? 具体的にはどんなふうに飾り付けるんだよ? てゆーか、そもそも入場ゲートってどんなのなんだ?」
本当に、そもそも、な質問。明は「え?」と一瞬困った顔をしてから、続いて大きくため息をついた。
「はぁ~……亮さま、今さらですか? 本当に全く人の話を聞いてないんですね」
「……すんません。返す言葉もありません……どうか、この下僕めにお教えください……」
言うと、明はもう一度大きくため息をついた。
「やれやれ……分かりました。それじゃあ簡単に説明しますけど、私もその辺のことに関しては、一切分かりません(、、、、、、)!」
「な、なるほど。分からないのか……」
……。
……。
……。
「いや、おい。ちょっと待て」
ビシリ!
右手の平を前に突き出した俺は、そのままなるべく冷静に聞いた。
「分からないって……何だ? え? さっきのお前の口振りからすると、ここは、お前は内容について知ってて当然のところなんじゃないのか?」
……明の回答は?
「あ、ごめんなさい~。確かに説明はあったんですけど、途中で何だか眠くなってきちゃいまして……聞いてませんでした! てへっ☆」
「てへっ☆ じゃねーよ! てゆーか俺には人の話をどうたらこうたら言うくせに、お前も聞いてないのかよ! いや、一番聞いてないような俺が反論できることじゃないけどさ!!?」
「きゃ~☆ 亮さまが怒った~☆」
ふざける明に怒って俺は思わず追いかけそうになったが、ささっ、と明は後ろにいた愛の背中に隠れ、身を守った。すぐさま俺は言う。
「くっ! 卑怯な……! 関係のない年下の姉を盾に使うとは……キサマ! それでも年上の妹か! 恥ずかしくないのか! 妹だけど年上として年下の姉に守ってもらうなんて!」
「や~ん☆ 何だかややこし~❤」
「ややこしくしている一族の末裔が何を言うか!」
「す、すみません……」
と、その時だった。
明と同じく一族の末裔である愛が、明の代わりに謝った。
「その……御守家にも色々と事情がありまして……また、明が聞いていなかった入場ゲートの飾り付けに関しましては、私が責任を持って代わりにご説明いたしますので……どうぞお許しください」
「ぐっ……ぬぅ」
愛の大人の対応……明には色々と言いたいこともあった俺ではあったが、ここはもはや黙るしかなかった。
ちなみに、とここでもはや恒例のどうでもいい情報だが、このメンバー内では、明が一番(四月生まれ)。俺は何気に二番目に年長(五月生まれ)だ。それなのに、三番目の結(九月生まれ)を通り越して一番年下の愛(三月生まれ)に毎回毎回諭されている俺と明って、いったい……。




