表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/223

11-13




 ……しまった。と思った。

 深く、深く、机に沈みすぎてしまったせいで……何よりも、作戦が上手くいって安心してしまったことにより、俺はいつの間にか夢の国へと旅立ってしまっていたのだ。

 そんな俺を現実世界へと連れ戻し、目覚めさせてくれたのはチャイムの音……そう、五時間目。特別授業である係決めの時間の終了を知らせる、チャイムの音だった。

 ……しまったなぁ。本当に、しまったなぁ…………。

 キーンコーンカーンコーン、の音が鳴るたびに、俺の中にある後悔の念がどんどん増していく。……いや、だってさ? 普通、絶望の淵に落とされて間もないようなやつがさ? 机に突っ伏してそのまま眠っちまうようなことがあると思うか? ふて寝にしたって、それはもうちょっと後で、の話になるだろ。

 やっぱり、怪しまれてるかな~……?

 心配に思いながら、俺はゆっくりと顔を上げ静かに周りの様子を確認すると、瞬間。


 「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」」」」」


 という、歓声……いや、雄叫び??? ともかく、そんな、まるで地鳴りのような大声がクラス中から上がって……。

 ……は???


 「「「「「タッチー! タッチー! タッチー! タッチー! タッチー!」」」」」


 と、混乱する俺なぞ、まさに道端に落ちている小石ほども気に留めることなく、続いて鳴り響いたのは、謎の〝タッチー〟コール。

 タッチー? ……タッチ? (さわ)れ??? いや、違うな。人の名前(、、、、)……か?

 なぜそう思ったのか? それは、タッチーコールが繰り返される先……その先端。教卓。

 俺が眠ってしまう前までは先生が立っていたはずのその場所には、両手を振り上げ、気合をあらわにする細身の男……クラスメートBの姿があったのだ。ついでに言うと、クラスメートBのすぐ真後ろの黒板には、【応援団・団長 伝説の祈祷師タッチー】の名が刻まれている。

 どうやら、などと言うまでもなく、状況から察するに、クラスメートBである彼がタッチーであるらしい。

 ……で? それで何で、タッチーとやらが応援団の団長に決まったらしいだけで、こんなにも盛り上がっているんだ??? 伝説の祈祷師とか書かれてるけど……それが何か関係あるのか???


 「「「「「タッチー! タッチー! タッチー! タッチー! タッチー!」」」」」


 「……」

 ……まぁ、何だかよく分からないが、とりあえずこれだけは言えるな。

 ありがとう、タッチー。キミのおかげで、どうやら俺は眠ってしまっていたことがバレずに済んだらしい。声に出して礼を言うことはできないけれど、心の中で礼を言っておくよ。本当に、ありがとう。


 「「「「「タッチー! タッチー! タッチー! タッチー! タッチー!」」」」」


 ……。

 よし。それじゃあせめてもの感謝の意を込めて、一応、俺もタッチーコールに参加しとくとするか……。

 「た……タッチー! タッチー! タッチー! タッチー! タッチー!」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ