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……しまった。と思った。
深く、深く、机に沈みすぎてしまったせいで……何よりも、作戦が上手くいって安心してしまったことにより、俺はいつの間にか夢の国へと旅立ってしまっていたのだ。
そんな俺を現実世界へと連れ戻し、目覚めさせてくれたのはチャイムの音……そう、五時間目。特別授業である係決めの時間の終了を知らせる、チャイムの音だった。
……しまったなぁ。本当に、しまったなぁ…………。
キーンコーンカーンコーン、の音が鳴るたびに、俺の中にある後悔の念がどんどん増していく。……いや、だってさ? 普通、絶望の淵に落とされて間もないようなやつがさ? 机に突っ伏してそのまま眠っちまうようなことがあると思うか? ふて寝にしたって、それはもうちょっと後で、の話になるだろ。
やっぱり、怪しまれてるかな~……?
心配に思いながら、俺はゆっくりと顔を上げ静かに周りの様子を確認すると、瞬間。
「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」」」」」
という、歓声……いや、雄叫び??? ともかく、そんな、まるで地鳴りのような大声がクラス中から上がって……。
……は???
「「「「「タッチー! タッチー! タッチー! タッチー! タッチー!」」」」」
と、混乱する俺なぞ、まさに道端に落ちている小石ほども気に留めることなく、続いて鳴り響いたのは、謎の〝タッチー〟コール。
タッチー? ……タッチ? 触れ??? いや、違うな。人の名前(、、、、)……か?
なぜそう思ったのか? それは、タッチーコールが繰り返される先……その先端。教卓。
俺が眠ってしまう前までは先生が立っていたはずのその場所には、両手を振り上げ、気合をあらわにする細身の男……クラスメートBの姿があったのだ。ついでに言うと、クラスメートBのすぐ真後ろの黒板には、【応援団・団長 伝説の祈祷師タッチー】の名が刻まれている。
どうやら、などと言うまでもなく、状況から察するに、クラスメートBである彼がタッチーであるらしい。
……で? それで何で、タッチーとやらが応援団の団長に決まったらしいだけで、こんなにも盛り上がっているんだ??? 伝説の祈祷師とか書かれてるけど……それが何か関係あるのか???
「「「「「タッチー! タッチー! タッチー! タッチー! タッチー!」」」」」
「……」
……まぁ、何だかよく分からないが、とりあえずこれだけは言えるな。
ありがとう、タッチー。キミのおかげで、どうやら俺は眠ってしまっていたことがバレずに済んだらしい。声に出して礼を言うことはできないけれど、心の中で礼を言っておくよ。本当に、ありがとう。
「「「「「タッチー! タッチー! タッチー! タッチー! タッチー!」」」」」
……。
よし。それじゃあせめてもの感謝の意を込めて、一応、俺もタッチーコールに参加しとくとするか……。
「た……タッチー! タッチー! タッチー! タッチー! タッチー!」




