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 「先生、体育祭などの学校行事の際、この学校のルールでは、やむを得ない事情を持った生徒以外は、必ず何かしらの係にならなければならない、という決まりがあるそうですね?」

 「あ、はい。まぁそう……ですね。でも――」

 「ならば、私たちとて例外ではない。ということですね?」

 「えっ」

 上手い! そう思った。

 おそらく先生の「でも」の後に続いたであろう言葉は、屋上で俺が言ったことと同じ――

 「あなたたちはそのやむを得ない事情を持っているから、例外ということになります」

 ――だ。明はそれを、自分たちは例外ではない。と先に言ってしまうことによって防いだのだ。

 明は驚いたような表情を浮かべる先生に構わず続けた。

 「ルールはルール。私たちはべつに、争いを好んでいるわけではありません。なので、ここはそのルールに従い、係に入らせていただきます。そうですね……では、入場ゲートの飾り付け係ではどうでしょう? もちろん、愛や、何よりも結さまさえ良ければ、ですが?」

 チラリ。明はわざとらしく、後ろの席に座る愛と、前の席に座る元・お嬢さまである結に視線を送ると、二人も少し大げさに、こくん。と大きく首を縦に振って答えた。

 「構わないわ。むしろ面白そうじゃない? それにしましょう」

 「私は結さまさえ良ければ、どのような係でも構いません」

 「決まりですね。では、私たち三人は、入場ゲートの飾り付け係に立候補します」

 「え……あ、あれ? えっ? あのぅ……?」

 「何か?」

 流れるような会話の連携。気づけばいつの間にか三人共立候補宣言を完了させている、という状況に先生は困惑気味に口を開いたが、即座に返事を返した明に、ビクン! と先生の身体は少し跳ね上がった。

 それから先生は、「あ、あはは! 何でもないわ! えーと、御守さんたちと白乃宮さんは入場ゲートの飾り付け係に……」と、それを誤魔化(ごまか)すかのように、慌てて先ほど黒板に書き連ねた係名の下に三人の名前を書いていった。

 完璧……だな。

 作戦開始から僅か一~二分という早業。

 言われてマズイことは自分から先に言ってかき消し、三人で連携、会話をすることによって他から口を出されることを防ぐ。

 ……ぶっちゃけ、こうまで見事に、巧みに話術を使いこなし、作戦を遂行できるとは思ってもいなかった俺は、この時改めて、かつてあれほどまでに絶大な力を有した白乃宮家、その専属メイドを代々受け継ぎ、守ってきた、御守家が誇る〝奉仕力(ほうしりょく)〟……とでも呼んでおこうか? 主人の生活はもちろんのこと、あらゆる場面において主人を助け、補佐をするその力の、レベルの高さ……それに驚愕(きょうがく)した。

 前に愛に助けられた時も驚いてしまったが、明もまさかこれほどとは……もはや、さすがは御守家、と言っても過言ではないかもしれんな。




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