11-10
……よし! 完璧だな! 作戦はちゃんと憶えたし、あとは実行するだけだ!
そう思った、次の瞬間だった。
ちょうど授業開始のチャイムが鳴り、鳴り終えると同時に教室のドアが開いた。
ガララ!
「こほん。さて皆さん。五時間目の授業は朝礼の時に話した、体育祭での係決めをやりたいと思います。何の係になるか決めてきましたか?」
そこから入ってきたのは、特別授業なのだから当然と言えば当然。担任の小田 聡美先生だった。
先生は入口の所でにこやかにそう話すと、スタスタ、普通に進み、教卓の前で一度、起立、礼。の号令をかけてから、チョークを片手に黒板へ書き込みながら続きを話した。
「えーと、現在までにまだ決まっていない係は……入場ゲートの飾り付けに、清掃。それから飲食物の販売手伝いと……」
……って、アレ??? 何か……いつもの先生と雰囲気が違うような……???
だって、いつもならこの辺りで連敗記録更新の話が出るか、もしくはネタを一発かましてから本題に……何だかマトモすぎるぞ???
いったい何があったんだ、先生? これじゃあまるで、普通の先生じゃないか。そう俺が思っていると、早くも先生は残っている係を書き終わり、変わらずの笑顔で振り向いた。
「はい、それでは立候補をとりたいと思います。決めてきた人は挙手してくださいね❤ ちなみに、もしも係の定員以上に立候補者がいた場合は、公平にじゃんけんで決めたいと思いますので、そのつもりで❤」
……不気味だ。正直、そう思った。何やら先生の機嫌が良すぎる気がしてならなかった。
しかし……と、俺はそこで思考を踏み止まらせる。今はそんな不気味な先生に構っている場合ではない! そう! 今の俺には……俺たちには、重要かつ重大な作戦を完遂しなければならないという〝使命〟があったのだ!
これが最初の一歩だということもあって……それこそ規模自体は全くと言っていいほど大したことはなかったが……大げさでも何でもなく、これは本当に結の未来にも関わってくるほどの作戦! 邪念など捨て去り、戦場を駆ける兵士がごとく。目標にのみ向かって前進しようではないか!
そうだろ、明!
チラリ。俺は遠く離れた席。明の席の方を見てみると、ニヤリ、とこちらを見ることなく口元だけで笑った明は、しかしこっそりと親指を立てて俺の心の問いかけに返事をした。
それから明は、作戦完遂のためすぐに行動に移る。
「はい!」
大きな声と共に挙げられた明の右手。一番最初に手を挙げたということもあって、当然クラス中の視線は明に降り注ぎ、ざわざわ、と騒めきたってしまうことになったが、明はそんなことで怯むような脆弱な精神の持ち主ではない。「えっと……はい、御守 明さん」と先生があてたのをちゃんと確認してから、明は冷静に作戦を開始した。




