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 「え……?」

 突然、だった。まるで怒鳴り声のような明の声が辺りに鳴り響いた。

 見れば、そこにいた明の表情は、普段見せているのん気な表情とは一変。逆に、真剣そのものの表情へと変わっていた。

 明は持っていたお茶を静かにシートの上に置くと、そのままの表情で話した。

 「……結さま? 結さまは本当に、それでいいと思っているんですか?」

 「そ、それでいい……も、何も、そうするしか、私には他に選択肢が……」

 「では、今のままの結さまで、結さまの〝目標〟は達成できるんですか?」

 「……!」

 驚きの表情を浮かべる結。

 だが直後、結はすぐにその顔を明から背けてしまった。

 当たり前……と言えば、そうなのかもしれない。なぜなら、結の目標とは〝きれいな白乃宮の名を取り戻すこと〟なのだ。その目標に対し、今行おうとしている行動は正しいのか? と聞かれてしまったら、正直。結の完全な味方である俺でさえも、「ええと……」と首を傾げてしまうことになるだろう。

 「……できませんよね?」

 と、俺と同じく結の完全な味方……明は、しかし味方であるが故に。結に厳しい言葉で言い放った。

 「はっきり言います。今のままの結さまでは、結さまの目標を達成することは絶対に不可能です!」

 「……っ!」

 明の言葉に何も言い返すこともできず、顔をしかめる結。

 だけど結は、それからゆっくりと、明のことを真っ直ぐに見て話した。

 「……明。それなら私は、どうしたらいいの? いったいどうしたら、みんなに迷惑をかけずに、目標を達成できると思う……?」

 「べつに迷惑なんてかかってもいいじゃないですか!」

 「え?」

 予想外の明の言葉。結……どころか俺さえも呆気に取られてしまったが、明はそれに構わず続けた。

 「いいですか、結さま? 結さまは周りのみんなに迷惑をかけないようにかけないように。そればかりを考えて行動していますよね? その結果が……この僅かな期間いっしょにいただけですぐに分かりましたよ。その結果が、〝元・お嬢さま〟! 周りに迷惑がかからないようにあえて自分から周りを遠ざけ、自分がいることで少しでもマイナスになってしまうようなことがあればすぐに身を引く……これでは何をどうがんばっても、きれいな名前を取り戻すことなんてできませんよね? だって、きれいだの汚いだの、それを判断するのは結局周りの人たちなんですもの。……だから、いいじゃないですか! 迷惑をかけたって! 最初は確かに迷惑がられることの方が多いかもしれませんが、それならばそれ以上に! 迷惑以上に周りのみんなの役に立ってみせましょうよ! そうすれば、いずれは迷惑という言葉すら出なくなるんじゃないですか? 少なくとも、今以上に迷惑だと思われることはない! と、私は断言できますよ!」

 「明……そっか。そう……だよね!」

 うん! 明の言葉によって元気を……〝自信〟を取り戻した結は、そう大きく頷いた。

 「今の私が昔の私と何も変われていないっていうことは、明の言うとおり。今までの私のやり方じゃダメだったんだ。もう絶対に、白乃宮の名前から逃げない。そう誓うだけじゃダメだったんだ……明! 私、やってみるよ! 迷惑に思われたり、嫌がられたりするのは怖いままだけど、それを乗り越えて! 私は私の目標を達成してみせる!」

 だから……!

 結はそう呟くと、俺、愛。そして明の目を順番に、真っ直ぐに見つめてから話した。

 「みんな……こんなダメな私だけど、協力……してくれる?」

 「――」

 互いの顔を見つめ合う、俺、愛、明。

 俺たちはそんな見つめ合った互いの顔が全て笑顔になった、その瞬間。結の方を振り向き、全力で答えた。


 「「「もちろん!!!」」です!」







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