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「今日は頭を下げる人が多いですね~」
ずずぅ。そんな俺のことをテキトーに流した明は、弁当箱の隣に置いてあったお茶を一口すすってから話した。
「まぁ、そんなことより亮さま? 愛から五時間目の係決めについて話が出たので、ついでにそれについて〝作戦〟を立てておきませんか?」
「……え? 係決めの……作戦???」
はい~☆ いつもの調子で応えた明はそのまま続ける。
「聞いてなかった亮さまのために最初から説明しますけど、この胎川高校の体育祭では、ケガとか、病気とか、そういうやむを得ない事情を持った生徒以外は全員。必ず、何かしらの係にならなければいけない、という決まりがあるそうなんですよ。そこで、どうせなら四人いっしょの係になりたいじゃないですか? だから何の係になるのか、ここで皆さんと話し合って決めておきたいな~と! 思いまして~?」
「ああ、なるほど。そういうことか……あ、でも……」
よっこいしょ……。元の位置に戻ってから、俺は改めて話した。
「世間的には全く関係ないことになっている俺ならともかく、お前たち御守家や、それこそ白乃宮家の結はやむを得ない事情ってやつを持っているわけだし……そういうのには参加しなくてもいいんじゃないか? というか、口にこそ出ないとは思うが、逆に参加しないでくれと心の中で言われそうな気がしてならないんだけど……?」
「え? どうしてですか?」
「どうして、って……そりゃあ、その……」
「……あのね?」
思わず口ごもってしまう俺。それに代わり、結が説明する。
「小学校、中学校と全部そうだったんだけど、私って……ほら、悪い意味で有名でしょ? そんな有名な私が学校の行事に参加しちゃうと、少なからず保護者の方から色々と〝苦情〟が出てきちゃうんだって。だからいつも参加してなかったの」
「く、苦情!? そんな! あんまりですよ! だって事件の時の結さまはまだ小さかったですし、それを白乃宮家にいいように操られていただけで何にも悪くないじゃないですか!」
ありがとう。そう一言置いてから結は続ける。
「でもね? それでも、やっぱり私は白乃宮家の人間なの。亮や愛、明は関係ないって言ってくれるけど、周りの大人たちは決してそうは思わないから……当たり前と言えばそうなんだけれどね? だって、周りにいる大人たちは全員、事件の被害者やその家族たち……知らなかったとはいえ、私は事件の中心にいたわけだし……」
「お……おい、結!」
とっさに、俺は結の言葉を止めに入った。
だけど結は、ニコリ、とある意味予想外にも小さく微笑んで答える。
「だいじょうぶだよ、亮。私はもう、決して私の過去から逃げたりはしないから……あ、ごめんね、明? 話が少し逸れちゃったね。とにかく、そういう理由で私は今まで学校行事には参加してこなかったの。だから、今回の係決めのことも明たちには悪いんだけれど、私から先生に話して、やらなくてもいいようにしてもら――」
「却下します!!」




