#2,大切な、日。 2-1改
こ……ツツ殺される!!!
――これは決して、〝地上最強の生物〟で有名な某人気漫画の作者が自衛隊にいた頃、三十キロの荷物を担いで、二泊三日をかけて百キロメートル(富士山一周)を歩かされた時に、歩き始めて僅か数時間でいきなり言い放ったセリフではない。……決して。
俺が、倉田 亮が今、純粋に、そう思ったのだ……。
――左を向くと、そこにはすでにただの屍と化して窓の手すりにぶら下がっている、高利の亡骸が一つ……。
――右を向くと、そこにはいかにも、〝何も見ていない〟とでも言いたげな横顔を見せるクラスメートたちが大勢……そして、今年ついに三十路に突入した担任教師、聡美先生が一人。
――後ろは……向くことができない。なぜなら俺は、〝裏切り者〟という名の、クラスメートAに〝捕え〟られていたからだ。小さく、すまん。という声が、念じるように後頭部から聞こえてくる。
――そして、正面……。
そこには、今にも口から炎でも吐き出しそうな勢いで、右拳を握り締める結……ではなく、元・お嬢さまの姿があった……。
「……へ……へへへ……」
……絶望的なこの状況……俺に残された唯一の選択肢は、〝笑う〟ことだけだった。
「……へはっ! ははっはっ! ふへははははは!!!」
ただ、ただ、〝笑う〟こと……だけだった………………。
「ははははは――ッッ!!」 ……ぐしゃっ。




