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――昼休み、屋上。
「いや~! それにしても昨日は楽しかったですね~♪ 特にあの、〝ガンゲー〟なるものの緊張感といったらもう!」
……と、またいきなり今日に戻ってしまって申しわけないんだが、今の明のセリフでもうお分かりだろう。
そう。俺が昨日御守家に持って行ったゲームとは、今は懐かしガンシューティングゲーム。略して〝ガンゲー〟だったのだ。
ガンゲーはそもそもコントローラーが銃の形をしていて、その形の性質上、ゲーム内のことは全て片手で操作できるようになっている。しかも、と続けると、俺が持ってきたゲームは都合の良いことに難易度を調節できる他、二人ずつなら同時プレイも可能! これならば初心者でしかも片手しか使えない愛でも十全に楽しめるし、もちろん明や、いつもやっている俺や結も楽しめる!
翌日になった今でもその話題で盛り上がっている屋上……我ながら、なんと素晴らしいゲーム選択だったのだろう! ナイスチョイス! ナイス俺! そう、俺は思わずにはいられなかった。
「みんなでできたし、すっごく盛り上がったよね! あ、でも、その中でも、あのゲームで一番盛り上がって楽しんでたのって……亮? やっぱり、〝愛〟だったよね?」
「え?」
結からの不意な問いかけ。……愛が一番楽しんでた?
えーと、と確認するように、俺は昨日の、ゲームプレイ中の愛のことを口に出しながら思い返してみた。
「まずは一度、俺と結が見本を見せてやった後に愛たちと交代しただろ? そこで愛は向かってくる敵のゾンビに向かって、キャーキャー、言いながら銃乱射。で、弾切れになって、リロードしなくちゃ撃てないのにやり方を忘れてそのまま引き金を引きまくる。そこに結が助け船を出してリロードのやり方を教えるが、パニック状態の愛はまた弾を撃ち尽くした上、さらにリロードのやり方も忘れてそこで一度負ける。んで、『もう一回! 次こそはちゃんとできます!』と意気込んでもう一度やるも、キャーキャー、言いながら弾を撃ち尽くすこと、リロードを教えること三か……いや、四回。ようやくリロードを覚えるも、小ボスが出てきて負け、その直後『もう一回!』とさらに連続でやり、今度は子どもみたいに目を輝かせながら、キャーキャー、騒ぎながら打ちまくって、学校での、普段の無口無表情からは考えられもしないほどの、満面の笑顔で――」
「亮さま亮さま亮さま~? ちょっと愛の方を見ていただけますか~?」
「ん? ……あ」
明に言われて、俺は正面。愛のことを見てみると……そこには顔を真っ赤に染め上げ、プルプル、と小刻みに身体を震わせている愛の姿があった。
愛はそれからゆっくりと少しだけ後ろに下がり、両手を床に付けて頭を下げた。
「……そ……その節、は……本当に……本当に……失礼、いたしました…………」
この様子……この言葉。どうやら愛は今になって、子どもみたいにはしゃいでしまっていた昨日の自分に対する恥ずかしさが込み上げてきたらしい。……いや、もしかしなくても昨日のゲームの後から、愛はずっとそう思っていたのかもしれない。
だって……今思えばゲームが終わった後。愛はいつになく、ソワソワ、と落ち着きがない様子だったし、今朝だって高利を始末する時も、普段なら一撃で殺れるところを今日は三発(、、)もかかってしまっていたりしたのだ(……まぁ、その分高利の苦しみはグレードアップしているから、制裁としてはむしろ有効なんだがな)。
考えるにつれてどんどん悪くなっていく愛の調子。失礼しました、と言ってしまいたくても恥ずかしくて言えず、言おうとしたところで言うタイミングもない。……その結果、今になって話を掘り返され、愛は赤面しながら頭を下げる結果に……そういうことらしい。




