10-19
いかんっっっ!!!!!
心の中で盛大に叫んだ俺は、目の前に広がる〝絶景〟を目と脳に焼き付け……じゃない! 明の部屋に行った結たちが帰ってくる前に事態の収拾をつけようと、全力で愛を説得しにかかった。
「ま、愛! 違うんだ! 俺はそんなことは言っていない! というか分かるだろ!? まだ再会してほんの少ししか経っていないとはいえ、そんなことを言っていないことくらい、俺の性格を考えれば簡単に!!!」
「えっ!? ……あっ! す、すみません!」
ぱっ!
俺に言われて急いでスカートから手を放した愛は、それからさらに顔を赤く染め、遂に恥ずかしさの限界を超えたらしい。慌てて身体ごと後ろを振り向き、俺から視線を外した。
ど、どうやら気づいたようだな! さっきの言葉が、明のデマカセだったということに!
ふぅぅぅーっ! 今日一番の安堵のため息をついた俺は、それから額から噴き出ていた汗を拭う。
まだ結たちは帰ってきていないな? ……よし! 間に合った! かなり危なかったが、これで俺の明日は安泰だ! いやはや、今日はホント、一時はどうなることかと思った場面が何度もあったが、何とか凌ぎきったぞ! あとは家に帰るだけだし、さすがにもうこれ以上、命の危険にさらされるようなことはないだろ――
「そうです、よね。前からだけじゃなくて、〝後ろ〟からもちゃんと見せないと……」
……え?
ぴろん。
次の瞬間だった。俺の目の前に再び現れたのは、あの〝絶景〟だった。しかし今度のは先ほどとは少し違い、愛のきれいでかわいいお尻の形が、くっきりはっきり、浮き出ている。これはまさに、絶景を超えた〝超・絶景〟である。と言いきっても何の過言も……。
……。
……。
……。
いや、じゃねーよ。ホント、そうじゃねーよ。……え? 何でそんなことは言ってないって言ってるのに、愛はまた見せてきたの? え? 何? もしかして、『俺はそんなことは言っていない』というのを、『俺はそういう意味で言ったんじゃない! 前も後ろも、〝全部〟を見たいって意味で言ったんだよ!』……って、解釈したの? 俺の性格を考えた上で(、、、、、、、、、、)!!?
メシメシメシメシメシィィッッッ!!!!!
「はッッッ!!!??」「!!?」
刹那、俺の全身を……どころか、部屋を、地球を、強大な〝殺気〟が貫いた。
もはや言わずとも分かるだろう。見れば、そこには満面の笑みを浮かべる、元・お嬢さまの姿が…………。
「ゆ! 結さまストップ! ここ、借りてるだけですので! 壊されると色々大変なことになってしまいますので!!!」
「え……ああ、そうだったね。うん。大丈夫大丈夫。分かってるよ、明。……それより、二人はそんなところで……ナニ(、、)を……してるの???」
「え、あ……っ!」
ささっ! とっさのことで反応が遅れた愛は、慌ててスカートから手を放してそれを恥ずかしそうに上から押さえた。
……その様子は、傍から見ればまるで、俺がバツゲームと称し、愛に強制的にそういう行為をやらせていたことがバレ、慌てて隠した……的な、そういう…………
「……そう。やっぱり、そういうことだったんだね?」
「ち、ちがっ……」
大丈夫だよ。お嬢さまは、否定しようとがんばる俺に向かって、優しく話した。
「大丈夫。ちゃんと分かってるから。うん。本当にちゃんと分かってるから大丈夫」
大丈夫、だから…………。




