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「……あの、亮さま?」と、俺が安堵のため息をついたのとほぼ同時だった。申しわけなさそうに愛が話しかけてきた。
「それで、先ほどの明の話について、なのですが……ほ、本当に、亮さまはそのようなお考えをお持ち……なのですか?」
っと、そういやそんなのもあったか。
しかし、そのような考え? 俺は明にどんな考えを話したんだっけ? ……全く、思い出せない。
仕方ない。どんなことを言ったのかは分からないが、憶えてない、何て言うのも失礼かもしれないし、ここはさっきみたいに適当に取り繕いつつ、話を合わせてみようか。
そう考えた俺は、「ああ、まぁそうだな」といかにも憶えているような口調で話した。
「俺個人の考えではあるが、そう思ってるよ。……何かおかしかったか?」
い、いえ! 愛は慌てて答えた。
「全然、そのようなことは……むしろ亮さまのお考えは普通……ですよね、はい……」
「ああ。全然普通だよ。フツーフツー。超・普通」
……自分で言っておいてアレだが、これじゃあ、適当、じゃなくて、テキトー、かな? とも思ったが、どうやらそんなテキトーでも大丈夫だったようだ。とは、それを聞いた愛が、
「そう……ですよね。分かりました」
と、それこそ普通に納得していたからだ。それを確認した俺はもう一度、良かった良かった、とため息をついた。
……ん? ところで……内容は知らんが、そんな普通にフツーな俺の考えに対して、愛はなぜあんなにも挙動不審な態度をとったのだろうか? 普通なら、何の問題もないはず……だよな???
「そ、それでは亮さま……し、失礼……します!」
「え?」
その時だった。
何やら緊張でもしているかのような口調で、傾げかかった俺の首を図らずも止めた愛は、それから立ち上がり、俺の目の前に立って気をつけをした。
な、何だ何だ? そう思いつつも、何だか動いてはいけないような雰囲気だったために俺はそのまま、座ったままの姿勢で愛の様子をうかがっていると、次の瞬間。愛は続いて左手で制服のスカートの裾を持ち上げて……。
……え?
ピラリ。
――たくし上げられたスカートの中から見えたのは、当然と言えば当然。〝パンツ〟だった。
色は愛の髪の色よりも少し薄い、淡いブルー。愛の部屋でも同じ色の物を見たがそれとは若干形が違い、こちらは縁が同じ青色のレースで飾られている。
……幼い顔立ちの愛のことを考えると、これは若干背伸びをしているようにも感じたが、しかしむしろそんな〝背伸びしてる感〟が逆にアクセントとなり、大人へと向かう少女のかわいらしさというか、そんな感じのモノを十二分に醸し出していた。
その〝パンツ〟を至近距離で観た俺は、正直、〝絶景〟である。と思った。
なぜなら、元より美人でかわいい愛が頬を赤らめて恥ずかしそうにそれをやっているということもあり、相乗効果によって〝パンツ〟が愛を! 愛が〝パンツ〟を! まさに一片の無駄なく互いの長所を引き出し……て…………。
…………。
は?????
いやいやいやいやいやいやいや。待てよ。落ち着けよ、俺! 何冷静に〝パンツ〟を観察してるんだよ!!
「ま、愛さん!!? いったい、何を!?!」
突然起こった緊急事態。否、異常事態! 俺は慌ててそう叫ぶように聞くと、愛は顔を真っ赤に染め上げながら、決して合わせることのできない目を泳がせながら話した。
「は、はい。あの、その……り、亮さまは先ほど、明に……『下着という物は、女の子が身に着けている所を観て初めて意味があるんだ! 女の子が身に着けていない下着など、ただの布にすぎん!! ……後で愛には、ちゃんと身に着けている状態を見せてもらわなければならないな』……と話されていたのですよね? なので、その……実際に私が身に着けている状態を亮さまにご覧いただこうと……」
い……言ってねぇーーーっっ!!!
……正直、御守家にきてからというものの色々ありすぎて細かいことはほとんど忘れてしまっている、というのは事実だ。
だけど、これだけは言える。言いきれる!
俺は絶対に、今愛が話したようなことを明には話しちゃいない! だってそんなことを話した日にゃ、俺の毎日はデッド・エンド! 元・お嬢さまによる365日の殺りくショー開幕だ!!!




