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お礼? 俺が首を傾げると、明は、はい~☆ といつものように話した。
「具体的に言うと、亮さまには〝先ほど亮さまが話していたこと〟を愛にやってもらい、そして二等賞の結さまには、私の部屋に設置してある冷蔵庫。そこに私が買ってきたシュークリームが入っていますので、それを差し上げます!」
「シュークリーム!!?」
ばっ! 突然、ちゃぶ台の上に身を乗り出した結の目の色が変わった。……結はシュークリーム(というか、甘い食べ物は大抵)が大好物なのだ。当然、側近中の側近であるメイド二号もそれを知っていたのだろう。だからその話を出したのだ。
……ところで、〝先ほど俺が話していたこと〟って……何だっけ??? 俺、明に何か話した……っけ???
やったー♪ そんな疑問だらけの俺のことはお構いなしに、子どもみたいに喜ぶ結はさっそく立ち上がって、先ほど開いた愛の部屋の反対側。明の部屋に繋がる扉を探し、壁を調べ始めた。
「で? で? どこに扉があるの? ここ? それともあっち???」
「ああ、待ってください結さま! 今、愛に〝亮さまが言っていたこと〟を伝えますので! えーと、愛! ごにょごにょごにょ……ということでしたので、あとはお願いします!」
「え? ……え!?! ちょっ! ほ、本当に亮さまがそんなことを……!!?」
? 何だ? やっぱり俺、明に何か話したのか? というか、何で愛はそれを聞いてあんなに驚いて……???
「はーやーくー!」……本当に子どもに戻ったみたいだ。オープニングの小さい頃よろしく駄々をこね始める結に、「はいは~い! 今行きますよ~!」と答えた明は、それから急いで扉がある方に走り寄り、壁を押して結と共に部屋へと入って行った。
……何だかよく分からないが、愛と二人だけになってしまった部屋。
えーと、と先に呟いてから、俺は愛に向かって……一応、隣にいる二人に聞こえてしまわないよう小声で話した。
「とりあえず、さっきはありがとな、愛。おかげで命拾いしたよ。今度何か礼をするから」
「い、いえ、そんな……とんでもありません。私はただ、私のことが原因で亮さまが不当な扱いをお受けになることが我慢できなかっただけで……」
……いや、俺はあんな、【女の子のパンツバラ撒き事件】を起こしたんだから、不当な扱いどころか妥当極まりない制裁を受けても何らおかしくはないんだが……とも思ったが、それを言うと愛はまた俺を庇って話がややこしくなる。そう考えた俺は適当に取り繕って、改めて言った。
「あー……まぁ、何にせよ、だ。とにかく俺は愛に助けられた。それだけは事実なんだ。だからちゃんと礼は言わせてくれ。改めて、ありがとな」
「あ……はい。お役に立てて何より……です」
……うん。若干の不満はあるようだが、一応は納得してくれたのかな? まだ行動としての礼が済んでいないとはいえ、これで唯一の心残りだったものを解決することができた。いやぁ、ホント、良かった良かった……。




