10-12
「いいじゃない、亮」
と、予想外にもこの話に乗ってきたのは結だった。
結は、ちゃぶ台に置かれた自分の分のカードを手に取ると、にっこり❤ 満面の笑顔で話した。
「ポーカー一回勝負ならほとんど時間はかからないし、それに……はぐらかされかけたさっきの話。私、どうしても気になるんだ♪ だからこの勝負で一位になった人は、ビリの人に何でも一つだけ〝命令できる〟っていうルールでやろ?」
「ホワッツ!!?」
逃げきったとばかり思っていた話題が再浮上!!? いや! というか、もしかしなくてもさっきよりマズイ状況なんじゃないか!?! だって結が一位になりさえすれば自動的に誰がビリになっても吐かされちまうわけだし……!!!
「まっ……!!」
「その話、乗りました!」
何だとッッッ!!?
待った! 俺がそう言う前に参戦を表明したのは明だ。明は、ふっふっふっ! と自信満々に言い放つ。
「ならば私が勝ち、亮さまか結さまが負けたら、今度のお休みの日は一日中私たちと遊んでいただきましょうかね! 愛が負けた場合は……まぁ、コスプレで!」
「お、おい! ちょっと待っ――」
「いいよいいよ~♪ ……愛もいいよね?」
「え? わ、私ですか? あの……えっと……」
「……いいよね?」
「……はい」
「あの……えっ!? ゆ、結さん!?!」
はい~、三対一で決定~! 結はそう言うと文字どおり俺に有無を言わさずゲームを開始した。
「最初は私からね? 二枚交換で!」
「では、私は三枚交換します!」
「あの……あ! さ、三枚交換……します……」
ギラン!
瞬間、だった。結と明から俺に、もはや殺気にすら似た視線が浴びせられた。
「はい、亮の番だよ?」
「何枚交換しますか?」
「……ッッッ!!!」
ば! バカな!!? いったい何がどうなって俺は一瞬でこんな窮地に立たされているんだ!? アレ!?! さっきまでは上手いこと帰る方向に話がまとまっていたはず……だよな!!? それが、え!? だってその……えっ!!???
落ち着けッッッ!!!!!
パニックに陥りそうになる頭を何とか、ギリッギリ、のところで踏み止まらせ、俺は改めて冷静に考えた。
要は結に一位にさえなられなければ俺の身は安泰なわけだ! だって明はさっき宣言したとおりだとすれば俺たちに遊びにきてほしいだけみたいだし、愛がまさか俺をこれ以上窮地に追いやるはずがない! いや、むしろ助けてくれるはずだ!
それを考えれば安全ゾーンは四分の三! 結が勝ったらその時点でジ・エンドだが、かなりの高確率で俺は助かることになるのだ!
は……はは! なんだ! べつにそんな慌てるほどのことじゃあないじゃないか!
とはいえ……やるからには油断禁物だ。そう覚悟を決めた俺は、失敗だけはしないようにしっかりと自分の手札を確認した。




