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 「どうやら一件落着のようですね?」

 そう呟いたのは愛だ。

 愛はそれから、俺のすぐ脇にあった壁に左手を当てて話した。

 「それでは部屋にカバンを置いたらすぐにお茶を淹れますので、少しお待ちください」

 「え? ああ。サンキュ。でもそんなに気にしなくても……」

 ……ん? ちょっと待てよ? 〝部屋にカバンを置いたら〟??? 今、愛は確かにそう言ったよな?

 部屋って……どこの部屋だ? え? だってこのアパート……一部屋六畳しかないんだろ?

 いくら前の部屋主が改造したからと言っても、限りのある間取りまでは変えられないはずだ。まさか、壁と壁の間にものすごく細い部屋……でも作ってあるというのだろうか?

 気になった俺は黙って愛の様子を見ていると……愛は壁に当てた手をそのままゆっくりと押し始めた。すると、さすがはカラクリ部屋。ギギギィ、と音を鳴らしながら壁が回転する。

 そして、そこから現れたのはなんと、人一人がようやく通れるか? というような狭苦しい部屋――ではなく、今いる部屋と〝全く同じ広さの部屋〟だっ……

 「何だとっっ!!? まさか!」

 「え? あ! りょ、亮さま!?」

 それを見たとほぼ同時だった。俺は思わず飛び出し、愛が開いた扉の向こう側の部屋へと足を踏み入れた。

 瞬間俺は、俺自身の考えどおりの光景を目にすることになった。

 「やっぱり……やっぱりこの部屋! 〝隣の部屋〟か!!!」

 そう、そこにあったのは、元いた部屋と〝全く同じ間取り〟の部屋だったのだ! つまり、ともう答えは一つしかない! アパートの大きさ、間取りから物理的に考えて、この部屋は隣の二〇一号室ということになる!

 「お見事です亮さま! 大当たりですよ!」

 ひょこ、と壁ドアから顔を覗かせた明がその詳細を説明した。

 「実は、前・部屋主の吉郎さんは自分の部屋一室だけでは物足りず、当時も他に入居者がいなかったことから、隣の部屋にも手を出しちゃったそうなんです。その結果、実質このアパートの二○二号室は六畳×三部屋で〝一室〟。ということになっちゃったんですよ~♪」

 「ろ、六畳三部屋!!? っていうことは、まさか反対側の二〇三号室も……!」

 「はい~☆ こちらと同様に繋がっちゃってますよ? ちなみに向こうは私の部屋で、この部屋は……ムフフ❤ 亮さまも結構大胆ですね☆ 〝女の子の部屋〟にいきなり突入するだなんて❤」

 「……え?」

 突入? 女の子の…………

 「あっ!? ま、まさかっ!!?」

 「……はい」

 こくん。振り向くと、愛が恥ずかしそうに頷いた。

 「ここは、その……私の部屋……ということになります……」

 や、やっぱりーーーっっ!!!

 「す! すすっす! スマンッッ!!!」

 もはや癖……と言うべきか、それを理解した瞬間俺は叫ぶようにそう言い放ち、跳び退いて土下座の姿勢をとった。

 「亮さま、何を!!?」それとほぼ同時に愛が驚きの声を上げたが、俺は構わず続けた。

 「まさか隣の部屋まで改造されてるだなんて……しかもその部屋が愛の部屋だなんて思ってもみなかったんだ! 頼む! このとおり、許してくれ!」

 「そ、そんな! 許してくれだなんて……わ、私は何も気にしませんよ? だって……」

 す……「だって」という言葉に反応して見上げた先。愛は左手で俺の後方を差しながら話した。

 「……ご覧のとおり、私の部屋の中も全て、最初にご案内いたしました二○二号室と同様にカラクリ部屋となっていますので……何も置かれていない部屋。実際、私自身。部屋を見られたという気にはなりませんから……」

 「え? ……あ!」

 ホントだ……などと、もちろん見ただけで分かるわけはなかったが、愛の言うとおり。この部屋は最初の部屋と同様に、不自然なほど何もない部屋だった。

 そうなるともはや確定的である。愛はべつに俺のことを気遣ってウソを言ったわけではなく、本当にこの部屋はカラクリ部屋で、装置(?)を動かさない限り、誰も住んでいない部屋と全く同じ状態なのだ。これなら確かに部屋を見られたという気にはならないだろう。




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