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「ゆ……結……っ!?」
――と、ほぼ同時だった。なぜかそこにいた亮が突然、〝驚きの声〟を上げたのだ。それには私も、今度は、「えっ!?」と同じように驚きの声を上げてしまう。
私は混乱したまま続けた。
「どっ……どうしたの、亮??? い、いきなりそんな大声を出して……???」
まさか、また何か私のことで……と、一瞬心配に思ったけれど、どうやら違ったようだ。
とは、次の瞬間。愛たちが普通に、笑顔で私に話しかけてきたからだ。
「結さま、お勤めお疲れさまです。すぐにお茶をご用意いたしますね?」
「亮さまのことならご心配には及びませんよ~? ただ単に、今の今まで結さまのことや、私たちの話をしていただけですから~。――ね、亮さま~☆」
「あ、ああ……まぁ、そうだな……」
……まぁ? なぜか亮だけ、妙に返事の歯切れが悪いような気も……しないでもなかったけれど……?
「ふ~ん? それならよかったけど? ――っと! 開けっ放しだった」
……気のせいかな? そんなことを思いつつも、私は一度、開けっ放しにしてしまっていた扉を閉めに戻り、それから改めて、二人が加わったことによって座る位置がほんの少しだけ変わった自分の場所……亮の隣へと腰を下ろした。
――その時だった。
チラッ……。
亮が一瞬、私を……いや、違う。一時間目の授業中に引き続き、また私の〝胸〟を見てきたのだ。
「む~! ……りょ~う~……?」
それに気がついた私が低い声を上げると、「うわっ! ご、ごめん!」と亮は慌てて、シートの端へと逃げて行った。……どうやら、私の〝胸〟を見ているのは、無意識のことからではなかったらしい。
「もうっ!」
私は声を上げて、両腕で、できる限り胸を隠しながら亮に聞いた。
「亮! 何で朝から私の胸ばっかり見てるの! とっくに気づいてるんだからね!」
「ああ! いや! その、だから……!」
あわあわ、と、どう答えたらいいのかわからないのか、亮は意味もなく両手を、ブンブン、色んな方向に振った。それを見て、私はますます目を細め、「むむむ~!」とさらに唸った。
だけど、それも数秒……。
「まぁまぁ、結さま落ち着いてください~」
ずずぅ~、とお茶をすすりながら、ではあったけれど、その間に明が割って入ってきたのだ。
「亮さまだって一人の殿方……女子である結さまの身体に興味があることは仕方のないことではありませんか~。――いっそ、少しくらい〝見せて〟あげてはいかがです?」
「みみ!? 〝見せる〟って……!!? そんなの、できるわけないじゃない! それに、亮は私の胸なんか〝べつに〟…………」
「ほほぅ?」
キラーン☆ ――瞬間、だった。
今までのん気にお茶をすすっていたはずの明の眼が、突然〝輝いた〟のだ。
え!? な、なに!!?
ビクン! と当然、私はそれに身体を反応させてより胸のガードを固めたのだけれど……しかし明は予想外にも、私ではなく、〝亮〟に向かって話し始めた。
「――聞きましたか、亮さま? やはり、私の〝予想どおり〟のようですね? ここはもう男らしく、素直に〝本当のこと〟を、〝結さまに伝えられては〟いかがですか?」
予想……どおり??? 私に、〝本当のことを伝える〟?????




