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 ――俺の部屋。

 俺たちの一日は、だいたいゲームで()めくくられる。――ちなみに今ハマっているのは戦争ゲームで、二人でもプレイできるのだが、画面が小さくなってしまうという理由から、俺と結はオンラインを交代でプレイしている状態だ。さらにちなみに言うと、俺は考えなしの突攻派。結は戦略重視のスナイパー派だ。

 「ぐあっ! また〝キュポンマン〟か!」

 ああ、これも一応説明しておこう。〝キュポンマン〟とは今は(なつ)かしいあの巨人格闘家(かくとうか)のことではなくて、装備型グレネードランチャーを自爆によるリスボーンなどを使って無限に撃ちまくっているやつのことを言う。撃つ時に、キュポン! という音が鳴るので、俺がそう命名した。……ルール的には問題ないとはいえ、俺的にはどうかと思う。

 「ああ、くそ、終わった。次は結の番だな」

 そう呟いて、コントローラーを結に渡そうとした、瞬間だった。

 『――結ちゃ~ん。お風呂、上がったわよ~』

 下で、母さんが呼んだのだ。

 「あ……」

 結はそれに少し戸惑ったが、しぶしぶ、といった具合に立ち上がり、「はーい!」と返事をしつつ、急いで準備を完了させて部屋を出て行った。

 大丈夫だって、結。後で二回連続でやらせてやるよ。

 そう陰で思いながらも、とりあえずは結が風呂に入っている間、俺はゲームを続けることにした。

 「……それにしても――」

 と俺は……急に独りになったからだろうか? ゲームを続けながらも、何となく、いつも以上に色々あった今日のできごとを振り返っていた。

 ……今日はホント、色々あったもんだな~。

 ――洗脳はされるわ、踏まれるわ、最終的には頭を割られるわで、それ自体はあまり良い思い出とは言えないのかもしれないが……それでも、何もないよりはすごく充実した一日だったと思う。……まぁ、欲を言えば? これがもっと良い思い出だったのなら、俺はこの一日を完璧な〝幸せ〟で終わらせることができたのに……なんて考えるのは贅沢(ぜいたく)、というやつだろうか?

 …………あ、でも待てよ? そういえばたった一つだけ、〝良い思い出〟と言えるできごとがあったな?

 どんな? とは、そう……あれは、一瞬だけ見た、結のあの、真っ白なパ――。

 ……。

 …………。

 ………………。

 ……い、いやいやいや! 俺は何を想像してるんだ! 止めろ、俺の脳みそ! ああ、ほらまたキュポンマンにやられてしまったじゃないか。……いいか? 今はとにかくゲームに集中するんだ。そう! とにかく何も考えないように心を〝白く〟保って……〝白く〟……?

 ……………………。

 だぁぁ! 止めろ俺の脳みそ! 一度打った文字を次から表示する便利機能を使わないでくれ! 俺だってあのことは悪かったと思っているんだ! 本当だ、信じてくれよ!

 ――はっ! そうだ、白じゃない! 心を〝透明〟に保つんだ! そう、〝透明〟に!!

 透明透明透明…………!

 俺は必死に自己暗示をかけた――だが、その時だった。


 ちゃぽん。


 という音が、どこからともなく聞こえてきたのだ。

 何だ? と俺は耳を澄まして聴いてみると……どうやらその音は、結の部屋から……というより、結の部屋の、〝真下〟から聞こえてくるようだった。

 そのまま耳を澄ましていると、続いて、シャアァァ、という音が聞こえてくる。

 ――そう、これはシャワーの音だ。結の部屋はちょうど風呂の真上に位置していたのだ。

 ……ああ、そっか。そういえばそうだったな。ということは、今結はシャワーを浴びて……。

 …………………………。

 ガンガンガンガンガンガン!!

 俺はとりあえず、(ひたい)をテーブルに何度も打ち付けた。

 止めろ、俺の脳みそよ。一瞬想像上の結の裸体(らたい)を妄想するのは!! というか、裸なら小さい時に何度も見たじゃないか! 風呂にだっていっしょに入ったし! 妙なことを考えるんじゃない!

 ――そうだ、イヤホンを付けよう。(ひらめ)いた俺は、急いでイヤホンを探し出し、装着する。

 すると……おお! これなら雑音は聞こえない! しかも銃や爆弾の音で、俺の妄想も爽快(そうかい)に吹き飛んで行くではないか!

 見事この状況を打破できるアイテムを手に入れた俺は、とにかくゲームに集中した。

 ――念のために、軽機関(ライトマシン)(ガン)を辺り構わずとにかく乱射する、という……迷惑極まりない行為を続けながら……。





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