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「な……なるほど……そういうことだったのですね……?」
――と、それを聞いて顔を真っ赤に染めた愛は、俺から視線を外しつつ、しかし静かに納得した。
「た、確かに、それは殿方にとっては仕方のないことかもしれませんね。しかしながら――」
「はい☆ しかしながら、残念なことに今の今まで離れ離れだった私たちには、まだ結さまのおっぱいのサイズは分からないんですよ~? ごめんなさいね、亮さま~?」
「……そ、そうか…………」
がくぅ。……俺は、どうやっても言い逃れられそうもないこの絶望的な状況に、顔と肩を落とした。
……でも、そんなことよりもちょっとだけ……決して二人に言うわけにはいかなかったが、俺は絶望よりも、ほんのちょっとだけ……愛たちが結の胸の大きさを知らなかったということ自体の方が、〝残念〟だった………………。
「あ……い、いえ! 私が言いたかったのはそういうことではなくて……!」
え……?
絶望の淵。愛の声に思わず反応した俺が顔と肩を上げると、愛は、未だに恥ずかしそうに頬を赤らめたままではあったものの、しかし、真っ直ぐに俺のことを見つめて話した。
「亮さまが結さまの……女の子の身体に興味があること自体は、決して悪いことではありません。特に、それが親しい方であればあるほど、逆に〝良いこと〟だと私は思います。――無論、行きすぎた言動は、いかに親しい間柄にあっても、相手を傷つけてしまう可能性もありますので注意は必要ですが……しかし、今回程度のことであれば、何も問題はないと思います。ですから……明の言葉にそう気を落とされないでください。明だって、そこはしっかりと理解しているはずですので……そうですよね、明?」
むぐ……と明は、さすがに俺をからかいすぎてしまったということに気づいたらしい。姉である愛の言葉に、素直に「ごめんなさい」と頭を下げた。
しかし、
「――で、ですが! 確かに本能をむき出しにしたままでは人として〝アレ〟ですが、本能を〝隠しすぎる〟という行為は、私は逆に〝悪いこと〟だと思いますよ!」
「何?」
不意の反論。
「どういう……意味なんだ???」――俺が聞くと、明は……。
「う~んと、そうですね? 例えば……愛?」
「? 何です――って!? ひゃあっ!?!」
「えっ!?!」
――突然、だった。突然明は、お茶をこぼれないように避難させたかと思うと、なぜか急に、愛のむ…むむむ、〝胸〟を、後ろから思いっきり両手でわし掴みにしたのだ。
うらやまし……じゃなかった! ――それには当然、愛も……
「さっさささ! 明!!? いきなり何を!??」
と困惑していたが、「いいからいいから♪ そのまま動かないでくださいね~☆」と明は愛に言い聞かせてから、俺に向かって話しかけて……いや、〝質問〟をしてきた。
「――さて、それでは亮さま? ここで〝質問です〟……この、愛の〝おっぱい〟のことを、亮さまは〝どう思われ〟ますか?」
…………は???
「ど……どう、思うって……あの……???」
……質問の意味が分からない。――愛の胸のことを、〝どう思うか〟??? ……明は俺に、いったいどんな答えを望んでいるというのだろうか?
??? と思わず首を傾げていると、明は続けて聞いてきた。
「〝好き〟ですか? それとも……〝嫌い〟ですか?」
……はあぁ?????
ますます、意味が分からない。――愛の胸を〝好き〟か〝嫌い〟か??? そんなの、本人の目の前で言えるわけがないじゃないか!
はは~ん? さては明のやつ……また俺のことをからかって遊ぼうとしているな?
そう考えた俺は、はふぅ、とわざとらしくため息をついてから答えた。
「……どうやら、お前はまた俺のことをからかいたいらしいな? 何だ? そこまでして俺におっぱいのことを好きだと言わせて、俺をおっぱい好きの〝変態〟にしたいのか?」
「ん? ――いえいえ。決してそのようなつもりはありませんよ~?」
じゃあ、どういうことなんだよ? ――そう聞こうとした、次の瞬間だった。明は俺が聞く前に口を開いた。
「では、質問を変えましょう……愛のおっぱいを、〝気持ち悪い〟――って、思いますか?」




