9-2
――屋上。
……オープニングから〝おっぱい〟〝おっぱい〟と……少々トバしすぎたな……。結、怒って……いや、それ以前に嫌われてないといいけど…………?
そんなことを心配に思いながらも、なんとか昼休みまでにはリスボーンすることに成功した俺がそこに到着すると……あれ? とすぐに気がついた。
いつもの貯水タンクの下……そこには、新たに加わった女子高生メイド二人の姿〝しか〟なかったのである。
つまり、結の姿が見当たらない……そのことから俺は、
まさかおっぱいばかり見ていたものだから、結は本当に俺のことを嫌いになって……!!?
――とも思ったが、どうやらそれは違ったようだ。
「ご安心ください、亮さま~☆」
と、俺の不安を察したらしい。メイド二号(明)がそれを説明してきた。
「結さまはただ単に、クラスの日直の仕事があって、まだ到着されていないだけですよ~? ちなみに、亮さまを殴られた後も別段怒っている様子もありませんでしたので、合わせてご安心くださいね~☆」
「あ……な、なんだ……そういうことだったのか。よかった……」
仮にも結のメイドという立場……〝こういうことに関してだけ〟は、明は信用できる。そう思った俺は、ほっ、と素直に胸をなで下ろした。
それを確認した俺は、それから靴を脱いで、人数が増えたことによって増設された、黄色と花柄。二色のシートの上に腰を下ろした。
「――亮さま、どうぞ。温かいお茶です」
すると、一拍ほど置いてすぐに……二号とは違い、超・気の利くメイド一号――いや、明なら〝べつにいい〟が、愛に対してそれでは失礼だな。ここは、ちゃんと名前で呼ぶか……愛、が俺に水筒のお茶を差し出してきた。
当然、それを拒否する理由は俺にはない。「お、さんきゅ」とありがたく受け取った。
しかし――気が利くが故に、一つ〝疑問〟に思ったことがあった。俺はお茶を一口すすってからそれを聞いてみる。
「ずず……そういやさ? 気の利く愛なら絶対、結の〝仕事を代わりにやる〟、って言いそうなもんだけど……先にここにきてるってことはもしかして、〝白乃宮のしきたり〟とか、そんな感じのことで自分の仕事は自分でやる……みたいな、そういう何かがあったりするのか?」
お褒めいただき、ありがとうございます。――気の利く、と言ったことに対してだろう。しっかり者の愛はそう一言置いてから俺の質問に答えた。
「特に、そういったしきたり等があるわけではないのですが……結さまは昔から、ご自身に与えられた仕事は、必ずご自身の手でやり遂げようとする傾向にあります。なので……一応は私からも、亮さまのおっしゃるようにお声がけこそするのですが……ご覧のとおり、そのほとんどを断られてしまい、こうやって先にきて準備をすることくらいしかできずにいますね」
「――まぁ? そのおかげで私たちも楽と言えば、確かにそうなんですけどね?」
はふぅ~☆ といつの間にか、自分もお茶を用意してそれをすすっていた明がそれに便乗した。それにはさすがの俺もツッコミを入れてしまう。
「……いや、お前はそもそも、メイドとしての仕事をちゃんとする気があるのか? 昼ゴハンの準備だって、さっきからどう見ても愛一人でやってるようにしか見えないんだが……」
「え~? さすがにそれはヒドイですよ、亮さま~? 私だって、一応はがんばって仕事をしてるのに~? ――ずずぅ……」
……とか言いつつ、もう一口茶をすすっている時点で説得力は皆無なわけだが……。
「――あの……ところで、亮さま? 私からも亮さまにお聞きしたいことがあったのですが、構いませんでしょうか?」
ずずぅ、と俺もそんな明につられ……たわけじゃないが、お茶をすすった、その時だった。愛が聞いてきた。「ん~?」と俺はそのまま聞く。
すると……なぜか申しわけなさそうな顔で、まるで呟くような声で愛は続けた。
「あの……そもそも、今日は〝なぜ亮さまは殴られてしまった〟のです……か?」
「んぐふっっ!!?」




