#9,雲散霧消? 9-1
――ところでさ? 何気に俺ってば、〝衝撃の事実〟ってやつを手に入れたんじゃないか?
――一時間目終了間際の教室。
クラス中から発せられる、『授業、さっさと終わんねーかな~?』オーラをモノともせず、淡々と授業を続けているじーちゃん先生の遥か後方……俺は静かに、昨日得た〝そのこと〟について、考えていた。
……とは、もちろん、
――愛と明の、〝バストサイズ〟……に、ついてである。
……憶えているだろうか? あれは、そう。俺が結に……元・お嬢さまに殺される、ほんの十数分前のことだ。
俺自身が犯した文字どおりの〝致命的なミス〟により、高利との〝秘密の会話〟が、結たち白日の下へと晒された、あの瞬間。しかし明は確かに、こう、言ったのだ……。
『残念ながら私は〝C〟ではなく、84センチの〝Dカップ〟です! ……しかしながら愛の方は〝大当たり〟ですよ! 86センチの〝Eカップ〟です!!』
――と。
……。
……。
……。
…………なぁ? これってさ? 〝本当のこと〟だと……思う???
……いや、だってさぁ? 二人はまだ、俺と同じ〝高校一年生〟なんだぜ? それなのに、そんな、まさか現役グラビアアイドルもびっくりな胸なんか……普通に考えて持っているわけがないだろ? しかも、と……十年ぶりに再会して、僅か一日の明にそれを言うのも変な話ではあるが……それを言ったのは、〝あの明〟、なわけだし…………。
……。
……。
……。
いや! 〝違う〟ッッ! ――〝そうじゃない〟んだ! ……今はそれが事実かどうかなんて、〝どうでもいい〟んだ……ッッ!!!!!
パシィッ! ――次の瞬間だった。
俺は、一瞬。俺自身の考えに引きずり込まれそうになる〝意識〟を、顔を平手で叩くことによって、何とか留まらせた。
その結果、また周りの数人が「何だ?」と俺の方を振り返ってしまうことになったが……そんなのは〝いつものこと〟だ。今さら、イチイチ、気にすることではない。
俺が今……そう! 〝今〟!! 最も重要視して考えなければならないことは、即ち!
そんな二人よりも〝圧倒的にデカい〟胸を持つ結のバストサイズは、いったい〝何センチ〟であるのか……ッッ!!!???
――ってことだッッ!!!
「……ふぅぅ…………!」
俺は一度大きくため息をつき、そして頬を伝う〝熱い汗〟を拭った。
……落ち着くんだ、俺ッッ!!! 自然と熱くなってしまうのはもはや仕方のないことかもしれないが、しかし! 心の中はいつだって冷静に、クールに保つんだ……そう! 表面上は荒れ狂う日本海ではあるが、波の下はいつだって穏やか……そんな感じに!!!
……まぁ、実際の海の中がどうなっているのかなんて、俺は全く知らな……おっと! そんなことは毎回どうでもいい!
キッ! と俺は目を見開き、俺の席からはかなり離れている壁際の席で、真剣にノートを取る、結の姿を……否! 〝おっぱい〟の観察を開始した!
刹那――ごくりっ! 思いもよらず、大きく喉が鳴った。
で……〝デカい〟ッッ!!!
改めて視る、巨大な〝ソレ〟ッッ!! 他の追跡を一切許さないほどの巨大な〝ソレ〟は、もちろんそのままでもはっきりと〝デカい〟と分かったが、その数席後ろで真面目にノートを取っている、すでに十分大きいと分かっている愛と見比べると、さらに〝一目瞭然〟だった。
〝一回り〟……〝二回り〟……いや! ヘタをしたら、〝三回り〟!? ――もちろん、胸元に比較的余裕があるこの学校の制服では、そこまではっきりとしたことを言いきれるわけではなかったが……だがしかし! それでも明らかに、結のおっぱいの方が〝大きかった〟のだ!
ば……バカなッッッ!!!??
瞬間、俺は口元を手で押さえ、心の中で叫んだ。
〝仮に〟……〝仮に〟、だ! あの時明が言った、〝愛は86センチ・Eカップ〟が……三度も言うが、〝仮に〟、〝真実〟だったとしよう!
じゃあ、それよりも〝圧倒的にデカい〟結のおっぱいは? いったい、何センチ〟だって言うんだ??? それって……えっ????? だって……えっ??????????
――落ち着けッッッッッ!!!!!!!!!!
――ダンッッ!!
俺は、思わず机を思いっきり叩いてしまった。
その結果、さっき顔を叩いた程度の音では振り向かなかった他の生徒たちまで……未だ淡々と授業を続けるじーちゃん先生を除く、〝全てのクラスメート〟たちが俺の方を振り返ってしまうことになったが……それすらも! 今の俺には〝どうでもいい〟ことだった!
――知りたい!
――気になる!!
――いったい結のおっぱいは、〝何センチ〟なんだ……ッッ!!!?????
……くっ!!! こうなったら……算数や数学は苦手だが、俺はこれでも〝現役の高校生〟だ! 〝因数分解〟? ホワイ? ナニソレ? 的なおっさんじゃあないんだ! ここは、俺と結との距離。そして壁に貼られている連絡用の紙やら、机の大きさやら、利用できるものはとにかく何でも利用して、そこから結の〝おっぱいの円周〟を導き出――
バキャアッッッ!!!!!
「…………〝あ〟」
刹那、だった。それを導き出す前に、俺の頭では〝ある計算〟が瞬時に導き出されていた。
その、〝計算〟とは…………。
【 俺(a)、調子に(p)乗る+元・お(b)嬢さま、ブチキ(p)レる = (#9(a)+オープニ(b)ング終了)死(p) 】
……という、〝死因数分解〟――
ダッダッダッダッダッ!! ――グッッッシャアアァッッッ!!!!!!!!!!




