1-10改 ウチゴハン。
「――ところで、亮ちゃん? その顔の傷……どうしたの?」
――晩ゴハンの食卓。母さんが聞いた。
「あっ、こ、これは、その……!」
それには俺に代わり、慌てて結が答えようとしたのだが・・・…結局、「……うぅ」と赤くなって、何も答えられず、小さくなってしまった。
「……ふ~ん? なるほどねぇ……」
と、しかし、次の瞬間だった。たったそれだけの結の反応を見て目を細めた母さんは、あごに手を当てて――
「――さては亮ちゃんが、友だちがお金くれるからって借りた変な本を読んで、その変な本のせいで、なんか、こう……〝洗脳状態〟? みたいなことになっちゃって、結ちゃんに何かエッチなことでもしたんでしょ? それで、結ちゃんは叩いちゃったと?」
――ば、バカなッッ!? 何という洞察力だ! 傷と、結が見せたほんの僅かな反応を見ただけで、そこまで分かってしまうのか!? まるでその場にいて、実際に見ていたかのような完璧な推理じゃないか!!!
俺の驚異的洞察力は、どうやら母さん譲りだったらしい。……いや、もしかしたら結のソレも、母さん譲りなのかもしれないな。……そう、俺は密かに〝恐怖〟した。
こくん、と母さんの推理に、結が静かに頷いた。それを見て母さんは、うふふ、と笑う。
「いいのよ、その時は。ガンガンやっちゃいなさい!」
……せめていのちだいじに……いや、じゅもんつかうな、くらいにしてほしい。特にあの常時バイキ○ト&ピ○リム(所謂〝正気を保った状態のバーサーク〟)状態だけは、ホントに勘弁してほしい。あれではマップをまともに進めないではないか!
俺はそう、また密かに心の中で〝祈った〟。
……あ、さて、そんな恐ろしい話よりも、この辺りで文字どおりの口直し。今日の晩ゴハンを紹介しておこうじゃないか。
まずはコロッケ。そしてご飯。――以上だ。
……え? 何? 〝少ない〟って? ……いや、まぁ、確かにそうなんだが……実は基本、俺の母さんは〝一品料理派〟なのだ。しかも小皿に分けることもなく、ど真ん中に大きな皿を置いて、そこに山盛りにする、というスタイルだ。
……何とも手抜き感バツグンな食卓だが……しかしまぁ、料理自体には意外と手が込められている。
――例えば今日のコロッケだが……材料は定番のジャガイモと牛ひき肉(と母さんは言い張っているが、実際には合びき)その他だ。
普通、この後は材料を炒めてから丸め、パン粉を付けてサラダ油で揚げれば完成なのだが、母さんの場合、その炒める時にひと手間……何と、ひき肉を一度、〝昆布水〟で〝煮る〟のだ! そうすると肉の臭みが消え、さらには昆布の旨みが肉にしみ込む……これだけでも十二分にうまいが、母さんはそこにさらに、〝ラード〟も使用する。すると、これがまた絶品! まるで肉屋のコロッケへと進化するのだ。おまけに生パン粉を使って、さくさく&ふわふわに仕立てているから、もう、とにかくうまい!
――あ、以上、ウチゴハンでした。




