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二つの王様

「何っ!?四天王全員が一夜にして全滅だと!?何故だ!」


 魔王城全体に響き渡るほどの大音声が男の口から発せられた。報告を持って来た男はびくびくしながら男の質問に答える。


「何でもその時の生き残りによると酷い匂いを纏う悪魔が現れたとか…」

「悪魔だと?それはもしかしてあの村の…」

「…のようですね。」


 男の言葉に報告書を持った男は首肯する。男は苦々しげな表情を作った。


「くっ…どちらにせよ人間族への攻勢が弱まることに違いはない…それにしてもその悪魔…あの四天王を全員倒したのか?」


 男は未だ信じられぬといった表情で男に繰り返して聞く。男は頷いた。


「ガナンディシュ様が唯一2回ほど攻撃を当てられたとか…それ以外の攻撃はよせつけもしないで倒したとのこと。」

「何と…単純な戦闘においては余を上回るガナンディシュでも2度しか攻撃できずに負けたと申すか…」

「【ブラッドボディ】も悪魔が嫌なにおいを発する物質を召喚してからは意味をなさず…討ち死に。とのことです。」


 男―――魔王は深く溜息をついた。


「そうか。失ったものは仕方あるまい…精鋭たちはあの村を攻め落とすためにあの砦に殆ど送っていたが…生き残りはどれくらいだ?」

「…数十名です。皆、重傷で余命幾ばくもありません。治癒魔術をかけていますが何故か血が止まらないので意味をなさないのです。」

「何と!」


 魔王は驚きのあまり声を失った。それだけ彼にはその部隊に自信があったのだ。この部隊が居れば世界を征服できる…という。


「…一度部隊を引かせる。」

「…ご英断承りました。すぐに手配いたします。」


 報告書を持って来ていた男はすぐに退出した。魔王は一人残って作戦の失敗を思って深い溜息をついた。
















 王都。こちらでは祝報が続々と届けられていた。


「魔王軍が退きました!」

「罠ではありません!完全撤去のようです!」

「斥候の情報に依りますとカラヌダズリートが何者かの手によって破壊されていた模様!」


 その方が届くたびに王城は湧き、皆に生気が蘇る。王は最近取り上げた庶民の男にひっそりと声をかけた。


「あのお方のおかげですかの…?」

「間違いないと思います。」


 男はある村の出身で、騎士にも劣らぬ体捌きを見せ、魔法を操る超人だ。


「やはり、彼を一度ここに招いて勲章を…」


 王は男に相談しようとしたが、男は最後まで言わせなかった。


「王よ。それはしない方がよろしいかと。私は彼に一度聞いたことがあります。『何故こんな寂れた村で戦うのか。王の下へ行き、実力に見合う爵位を与えられて戦った方がいいのではないか?』と。」


 王は一度頷いた。男は続ける。


「すると彼は言いました。『僕はここでやることがあるから王都には行かなくていいんだ。』と。無理に彼をここに連れてくる必要はないでしょう。彼には何かやるべきことがあるのですから…」

「ふむぅ…奇特な方だな…富にも権力にも見向きもされぬとは…」


 王は首を傾げながらも下手に相手を突きたくなかったので男の言葉に従うことにした。


(…それにしても、もう平和になったことであるし、異世界から人を無理矢理誘拐する必要もあるまい。アレは封印しておこう。)


 国民に知らせている希望はもう来たのだから、と王はそう決めた。




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