RUN
俺は足が速い。他の奴らと比べても段違いに速い。
運動会では幼稚園の頃から今、中学時代までずっとリレー選手に選ばれ、普通の徒競走でもずっと1位だった。
最高記録は50m6秒、100m13秒。自分でも何故ここまで速いのか分からない。
小学時代、俺は友達とずっと鬼ごっこをしていたが、遊ぶ事6年間、俺が鬼になった事は一度もない。
走るだけじゃなく、他の運動も俺はずばぬけて得意だった。体育の成績はもちろんA。
しかし、俺は体育が好きな訳ではなかった。嫌いって訳でもない。父からはいつも、
「体育を好きになれ」
と言われていた。そんな事を言われていながら俺は中学時代部活に入らなかった。というか、受験勉強もあって大変だったのだ。
ある日、勉強に疲れた俺は公園に行って休む事にした。ベンチで気持ち良い風にあたりながら考える。
何故俺は体育が好きじゃないのか。
こんなに運動神経が良いのに、どうしても好きではない理由があるのだろう。俺は真剣に、心の何処かにある理由を考えていた。
1時間が経った。ようやく分かった気がする。
運動が好きではない理由はわからないけど、運動を好きになれるかもしれない方法が分かった。
毎日走る。
非常に単純な話だが、好きになるにはこれに尽きる、と思った。
そう考えていた時、俺はすでに走り始めていた。
走るのを好きになれ、そう自分に言い聞かしながら。