01.いつも通りの日々。〈璃音〉
私の名前は栄田璃音。高校1年女子。この春、春坂高等学園に入学しました。
私は魔女でした。前世でユーシアという名の世界で魔女をやっていました。
だけれど今はただの女子高生。いや、”ただ”の女子高生じゃないかも。
私は前世『魔女』の時の記憶を持っているから、”ただ”の女子高生じゃないですね。
勇者に殺されて死んで、この世界に生まれて、
前世の記憶を持っていると自覚したときは、とても悲しかった。
だって記憶を持っているということを明かせる人が誰もいなかったのだから。
でも今はいるんです。それは私と同じ世界に生まれ、
この世界に記憶を持ったまま生まれた同じ境遇の人。
彼の名は賀川宰。前世では魔王でした。
宰とはよく喧嘩したわ。喧嘩するたび山1、2こ吹き飛んでしまったけれど。
黒い短髪に黒い瞳。ちょっとつり目で不良な感じ。だがモテる!
前世の容姿とよく似ている。目なんかそのまんま。
黒いマントに黒い服、全身黒。白い肌が黒をより際立たせる。
しかも顔が整ってるもんだから目がより印象的に、怖くなってるし。
まさに魔王よ。こんなんのどこが女子達は良いんだか。
そういえば前世で宰はハーレム魔王だったわね。
う~ん、私も顔は良い筈なのにどうしてモテないのかしら。
別にモテたいわけじゃないんだけれど。
前世じゃ敵同士だった私たちは今じゃ互いの唯一の理解者。
私が今一番信じられるのは宰。
宰は私にとって特別な存在。恋愛系ではないですが。
「おい璃音。弁当食わないのか?」
今は昼休み。私達は一緒に屋上で昼ご飯を食べています。といっても4人です。
まず私、そして宰、親友の緑川柚梨と宰の親友の十坂裕樹。
宰と裕樹はイケメンです。そのせいで女子の視線が痛い。特に私に対して。
柚梨は可愛くてモテモテだし裕樹の彼氏だからしかたないけれど
モテない私がイケメンとご飯を食べてることに嫉妬している。といったところでしょうかね。
「あぁ、今ちょっと考え事してたのよ」
私はまず最初にミニトマトを食べます。なぜかこれが習慣になってしまったのです。
「ミニトマト嫌いなのか?」
「普通よ、普通」
別にミニトマトは好きでも嫌いでもありません。
「じゃあなんで最初に食うんだ?」
宰の中では嫌いなものは最初に食べるという式が構成されているようです。
「普通だから?」
あー風が気持ち良い。
「疑問形で返されてもなぁ」
宰は呆れた顔をしました。
ふと柚梨の弁当が目に留まった。柚梨を見ると、柚梨は黒天使になっていた。
どうしたのでしょうか、なんかオーラが黒いです。
「ねぇ璃音ちゃん、唐揚げいる?代わりにあ~んで食べてもらうよ」
じゅるり
私は唐揚げをガン見する。
「由梨、唐揚げ頂戴!」
「あ~ん」
恥ずかしいけど柚梨なら平気。あ、別にGLじゃあないです。
ですが宰と裕樹は見てられないと言わんばかりに目を逸らしています。
「何よ2人して」
「別に、いつも通りだと思っただけだ」
これは宰。いつも通りなのになぜ目を逸らす。
「確かにそうだよね」
これは柚梨。
「僕もそう思うよ」
いつもあまり会話に入ってこない裕樹も同意する。
「ふーん」
放課後、私はいつも通り宰と一緒に帰る。
理由は帰る方向が同じだからだ。
「柚梨、裕樹、また明日ねー」
「また明日ー」