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メガネに願いを  作者: 虹色
第九章 ハッピー・エンドを目指せ!
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◆◆ まさか?! ◆◆


あ、電車が来た?


・・・いいや、次でも。

急がなくちゃいけない用事なんかないし、急ぐ気力も出ない。


次の電車・・・12分後?

茉莉ちゃんをここで見送ってから、どれくらいぼんやりしていたんだろう?



はぁ・・・。



どうして、こんなことになっちゃったんだろう?

なんだかよく分からない。


あのまま別れてよかったのか?

何かが間違ってる気がするんだけど・・・。


あーあ。


朝はあんなに張り切っていて、緊張していたけど楽しみだったのに。

あんなに練習した告白の言葉も、言う前に終わってしまった・・・。



・・・あ。

今日の目標。


俺の気持ちを伝えることが、今日の目標だったんだよな。

なのに、何も言ってない。

言う前に断られたからって、すごすごと・・・。


最初の予定では、きのうの夜に言うはずだった。

で、今日は楽しいデートのはずだった。

だけど、きのうは兄ちゃんに邪魔されて、今日に。

そして結局、今日も言えなかった。


ピアノの練習も、星野先輩に話しに行ったことも、全部無駄?

今までにやってきたことすべて、これで終了?



・・・いいのか?



だって、仕方ないじゃないか。

茉莉ちゃんはほかに好きな相手がいる。



だからって、これで終わりにして自分の気持ちはどうなんだ?

納得できるのか?



・・・納得?

そんなもの、できなくてもどうにかするしかない。

言ったら、茉莉ちゃんを苦しめてしまう。



本当にそうか?

本当は、覚悟ができてないだけじゃないのか?

断られたあと、茉莉ちゃんに対して自分がどんな態度をとるのか、自信が持てないだけじゃないのか?



・・・そうかも。



いいのか、それで?



だって・・・。



・・・・・。



・・・みんなに、 “変わった” って言われた。

自分でも “そうだな” って思った。


生徒会で頑張っている茉莉ちゃんを見ていたら、自分も頑張ろうって思った。

茉莉ちゃんを好きになってからは、頼りにされるようになりたいと思った。

だから、変わったのは茉莉ちゃんのおかげ。



・・・やっぱり、言おうかな。

今までのお礼の意味も込めて。



言うなら、今日じゃなくちゃダメだ。決心が鈍ってしまう。

それに、チャンスもないだろうから。



うん。

行こう。

さっきの電車に乗らなくてよかった。






決めたら、なんだか気分が軽くなったな。

どうせ断られるってわかっているからかも知れない。

変な期待も持たないし、なんだか自分の気持ちが整理できそうでほっとしてるのかも。



・・・それにしても、茉莉ちゃん、どうして急に怒ったんだろう?

あの場合、俺が怒る方が一般的なんじゃないのか? ふられたんだから。

まあ、べつに俺はふられたからって、茉莉ちゃんを怒ったりするつもりはないけど。


なのに、茉莉ちゃんが怒るなんて。

「上手くいくといいね。」って言っただけだぞ? “応援してるよ” って伝えたかっただけなのに。

もしかして、ふられた男の呪いの言葉に聞こえたとか?



フフ。

それにしても、あの怒り方。

まるで・・・、まるで・・・、そう、察しの悪い恋人に文句を言うみたいな。

ちょっとドラマとかマンガなんかにありそう。

女の子って、本当にあんな怒り方するんだなあ。


・・・なんて、感心してる場合じゃないな。俺はふられたんだから。



・・・・察しの悪い・・・恋人?



うーん、まさかね。


だって、茉莉ちゃんは好きなひとがいるって。

入試で一目惚れして、似ているメガネを選んだって。

その相手をずっと・・・。



メガネ・・・か。



似ていることが嬉しかったのに。

あの交流会の日、似てるって言われたって話したとき、茉莉ちゃんは恥ずかしそうに・・・・あ、れ?


茉莉ちゃん、あのとき何て言った?

恥ずかしそうに・・・「数馬くんは嫌ですか?」って・・・。

あれは・・・?




さあ。

部屋番号を押して・・・。


『はい?』


お母さんの声?

やっぱり緊張する!!


「あの、ひ、日向です。あ、あの、茉莉花さんに、」


『あら、日向くん? どうぞ上がってきて。』


「あ、は、はい。」


よし、頑張れ!




・・・メガネ。



メガネ屋で、ほかのメガネを一緒に試したこともあったな。

かけてみたのも似合うって言ってくれたけど、今のも似合うって・・・。

あのときも似てるって話をしたけど、茉莉ちゃんは何も言わなかった。ただ恥ずかしそうに笑って・・・。



あ、れ?

・・・まさか!



いや。

でも、このメガネのことは話したことがない。

中学のころにかけていたメガネのことも。


だけど・・・そんなことがあるのか?

偶然にしても、できすぎじゃないか?

でも・・・。




エレベーターが来た。

茉莉ちゃんまであと少し。




よく考えろ。

落ち着いて、思い出せ。

今日、茉莉ちゃんは断りの言葉をはっきり口にしたか?


・・・「ノー」だ!

俺に対して、ダメだとは言ってない。

つまり・・・、また俺が勝手に解釈しているだけかも知れない・・・?




――― もし、茉莉ちゃんの勘違いだとしたら?




そうだよ。

もし、勘違いだとしたら・・・、全部、辻褄が合うような気がする。

失恋したつもりになっていたところがよく分からないけど。



もしかして?!



今日もまた失恋したつもりになってるんじゃ?!

俺、励ましたりしちゃって。

茉莉ちゃんは俺の気持ちを知らないまま、あんな・・・。



いや。もうやめよう。

もうこれ以上、一人であれこれ考えるのはおしまいにしよう。

今までだって、こうやって誤解や勘違いで混乱してきたんだから。



・・・確かめなくちゃ。



訊かなくちゃいけないことがたくさんある。

確かめなくちゃいけないことがたくさん。



いや、そうじゃない。



俺に、言わなくちゃいけないことがあるんだ。

それを言わないからこんなことに・・・。



――― 『悲しませたら可哀そうだ。』

――― 『茉莉花も数馬も、言葉が足りな過ぎるんだよ。』



芳輝の言葉。

俺がはっきりしないから・・・はっきり言わないから茉莉ちゃんが悲しむって。

言葉が足りないから誤解が起きるって。





茉莉ちゃんに言わなくちゃ。


確かめることよりも、まずは俺の気持ちを伝えなくちゃ。








もう一話、数馬が続きます。

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