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メガネに願いを  作者: 虹色
第九章 ハッピー・エンドを目指せ!
93/103

◇◇ ああ、もう! ◇◇


言えた!

数馬くん、わたし、ずっと・・・。


「よかったね、茉莉ちゃん。」


・・・は?


「そのひとと、上手くいくといいね。」


ええええぇ?!

伝わってない?!


「あの、数馬くん。そのひとって」


「ああ・・・、いいよ、もう。茉莉ちゃんの気持ちはよくわかったから。」


どういうふうに?!

全然わかってないよ!!



信じられない!

数馬くんって、ものすごく鈍い人なのかな?

あんなに頑張ったのに・・・。


「数馬くん・・・。」


もう・・・なんて言ったらいいの?

情けなくて、泣きたくなってきた・・・。


「数馬くんの馬鹿。」


あ。

言っちゃった。


「え?」


「馬鹿。もう知らない!」


こうなったら何度でも言っちゃうんだから!


「え? あの。茉莉ちゃん?」


もう・・・いっぱい困ればいいんだ!


ああ・・・なんだか腹が立ってきた。

ふん!



そりゃあね、はっきり「好き」って言えないわたしも悪いかもしれないけど、あんなに頑張ったんだよ!

映画を見ながら決心して、それからずっと、どうやって言おうか考えて。ドキドキして。


なのに!!


それなのに、「上手くいくといいね」って、何よ?!

まるっきり他人事?



今までのわたしの態度とか思い出して、察してくれてもいいじゃない。

2年生になってからたくさん話せるようになったってことで、気付いてくれてもいいじゃない。

失恋したと思ったけど違ったって話で、森川さんのことを思い出してくれてもいいじゃない。

今日、二人だけで出てきたことだって、さっき、一緒にパフェを食べたことだって、考えたらわからない?

わたしが誰とでもそういうことをすると思ってるの?!


メガネのことだって、今までに何度も似てるって話をしたじゃない。

なのに、どうして分からないの?


ああ、もう!

ホントに信じられない。

まさか、自分が数馬くんに腹を立てる日が来るとは思ってもみなかった。



あ。終点?


「茉莉ちゃん、気を付け・・・て。」


ふん!

このくらい大丈夫に決まってるでしょ!

小さい子だって乗ってるのよ!


ほら。


ふらついたりしないんだから。

わたしは何でも一人で平気。

数馬くんに助けてもらわなくても・・・。


「茉莉ちゃん!」


ふん。

数馬くんと一緒になんか歩かない。

待ってなんかあげないもん。


「あ?!」

つまずいた?! わわ・・・。


「茉莉ちゃん!」



・・・ほ。転ばなかった。


足もと・・・、こんなに小さな段差に?

ああ、もう!


「大丈夫?」


数馬くん・・・。


数馬くんの腕。

さっきの告白が上手くいっていれば、今はこの腕につかまって歩いていたかも知れないのに・・・。


もう・・・。


「知らない!」


放さなくちゃ、今は。


もう、今日は仕切りなおす元気が出ない。

今日はどころか、二度とないんじゃないかな。

“わかってくれるひと” だと思っていたのに、こういう話にはまったく疎いなんて・・・。


「あの・・・、帰ろうか?」


「うん。」


あらら、あんなにおろおろして。

ちょっといい気味。

鈍いのはどうしようもないことだけれど・・・。



数馬くん。


怒ったことは謝りません。

帰りながら、よく考えてみてください。







「今日はどうもありがとう。」


「うん・・・。あの・・・。」


「ここで大丈夫。改札から出たら余分にお金がかかるし、うちは見える場所だから。」


電車の中でも、あんまりお話しできなかった。

あんなふうに怒ってしまったから、数馬くんもわたしも、なんとなく気まずいまま。


「そう・・・。」


朝、ここで会ったときには、まさかこんな気分で帰ってくるとは思っていなかったのに。

ドキドキしていたけれど、期待で胸がいっぱいだったのに。


「あの・・・、この湯呑み、今日から使うね。」


ああ・・・、むなしい。


「じゃあ・・・、またね。」


「うん。・・・月曜日に。」


数馬くん、どうしてわたしの気持ちに気付いてくれないんだろう?

いつも優しくて、他人のことを思いやってくれるのに。


ねえ、気付いてよ。

そうやって、手を振っておしまい?

どうしてわたしが怒ったのかわかってよ。



・・・もう、見えない。


さびしいよ。

帰ったら、カメさんに今日のことを話そう。




・・・・・!!




わたし、間違ってるかも。

あんなふうに怒ったりしちゃ、いけなかったかも。



もしも、伝わったんだったら?

わたしが数馬くんのことを好きだってわかって・・・、それでも、わからないふりをしたんだったら?

わたしを・・・傷つけないために。



そう。断って傷つけないために。

わたしの気持ちに応えられないから。

わたしたちの今の関係を崩さないように。



お誕生日のプレゼントだって、わたしがあげたから、単なるお返しかも知れない。

買いに行く時間がなかったから、どうせなら一緒に選んだほうが早いしって・・・。


そんなことに期待して、勝手にあれこれ考えて・・・。


ああ、また一人で勝手に盛り上がっちゃったんだ。

わたし、ほんとうに懲りない性格なんだな。



たいへん!


それなのに、数馬くんに「馬鹿。」なんて言っちゃった!

ああ、どうしよう?!

馬鹿なのはわたしだよ!!


ああ・・・、落ち込んじゃう・・・。



「ただいま・・・。」


「お帰りなさーい♪」


しまった。


お母さんに、数馬くんと出かけるって言っちゃったんだっけ。

誰と出かけるか言わないと心配するから。

お母さんたちは数馬くんのことを彼氏候補だと思ってるし・・・。


「どうだったの? 楽しかった?」


「うん・・・。」


途中まではね・・・。


「何か買ってきたの?」


「え? ああ、これ・・・、湯呑み茶碗なの。」


数馬くんと一緒に選んだ・・・。

白ウサギが跳ねているピンク色の湯呑み茶碗。

可愛いでしょう?


「あら、可愛いわねえ。今日から使う?」


「うん・・・。洗ってくるね。」


お母さんに追及されないように・・・。


「ジャス? なんだか元気がないわねえ。」


「そう? 少し疲れちゃったかな? きのうも賑やかだったしね。」


そうです。

疲れちゃったの。

きのうの夜からずっと緊張していたから。

さっきの告白で、気力を使い果たしちゃったから。


「夕飯まで休んでてもいい? お手伝いが必要だったら呼んでくれれば来るから。」


「・・・どうぞ。」


「ありがとう。」


そうだ。

わたし、結局、失恋しちゃったんだ・・・。







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