表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メガネに願いを  作者: 虹色
第九章 ハッピー・エンドを目指せ!
91/103

◆◆ がんばれ、自分! ◆◆


予想外の展開!!


茉莉ちゃんのこのつかまり具合っていうか、抱き締め具合っていうか、腕にかかる力が・・・もう!

なんだか、自分がものすごーく頼りにされてる感じ。強い男になった気分。


さっきはメガネにぶつかるほど顔を寄せ合って。

嬉し過ぎて笑いが止められなかったよ〜。だらしない顔を見られなくてよかった。

いや〜、映画館っていいなあ。


一つだけ残念なのは、茉莉ちゃんがつかまってる服が亮輔兄ちゃんのだってことだ。

このまましらばっくれて、俺のものにしちゃおうかな?


この分だと、告白したら、いい返事がもらえるかも。


とにかく茉莉ちゃんは、俺のことを嫌いではない。それどころか・・・、うわ、どうしよう?!



・・・何を考えてるんだ!

“どうしよう?!” じゃないだろ?

そこの部分が覚悟できてなくてどうするんだ?



うーん、じゃあ、どうする?



そうだな、まずは手をつないでみようかな?

さすがに、今日いきなり「チュッ!」なんていうのは無理だよな。

ああ、そうだ。

何かおそろいの物を買うとか・・・。



違う!

“どうしよう?!” の覚悟って、そこじゃないだろ?!


『うわあああああ!』

「わ!」


あ。


茉莉ちゃーん。

もうちょっとピッタリくっついてくれてもいいんだけど・・・。



ダメだ。


この状態で、何かをちゃんと考えるなんてできない。

今はこのまま身を任せて、幸せな気分に浸ろう・・・。







「ほんとうにごめんなさい。」


上映が終わったら、早々に放されてしまった腕がさびしい。

そのままつかまって歩いてくれてもよかったのに。


・・・それを言うことができない俺。やっぱり弱気な男?


「3時半か・・・。甘いものでも食べて、落ち着こうか?」


うん、そうだ。

さっきは手塚たちと一緒で、あんまりゆっくり話せなかった。

午前中は俺がハイになってたし。

このあと、告白するんだから、俺も少し落ち着いた方がいい。


「うん・・・。」


茉莉ちゃん、少し疲れた顔をしてる?


「大丈夫? あの映画、あんなにドキドキする内容だとは思わなかったよね?」


「はい・・・。」


あれれ、深呼吸なんかしちゃって。

よっぽど怖かったんだな。かわいそうに。


手をつないであげた方が・・・、いや、やめておこう。

予告なしにそんなことをして、また後夜祭のときみたいになったら大変だもんな。


あーあ。

この、ほんの少しの距離が・・・あ、笑った。

なんか・・・、すごく親しみのこもった・・・。

なんだろう? ちょっと、なんか・・・。


「あ、あの、茉莉ちゃん、何を食べたい? 俺、さっきのところで見た抹茶パフェが気になってるんだけど。」


今日一番、いや、この2週間くらいで一番の笑顔かも!


「わたしも。でも、少し大き過ぎる気がして。だって、お昼のあと、座ってただけでしょう?」


「そういえば、茉莉ちゃんの親子丼、けっこうな量だったよね?」


「そうなの。ご飯が深くて驚いたけど、残すのは好きじゃないから頑張って食べちゃった。」


会話が弾んでる!

もしかしたら、映画館効果で親密度アップ?!


フードコートはさっきよりも混んでいるけど、二人ならどうにか座れそう。


「やっぱり、パフェは大きくて無理そう。ホットチョコレートにする。」


江川さんに勧めていた甘夏のじゃないんだ?

・・・あれ? あのメニューって・・・。


「お待たせしました〜。」


「あ、はい。」


二人席は空いてなくて、柱周りのカウンター席に並んで座って・・・気付いた。近い。

向かい合わせの二人席よりも、こっちの方がはるかに近い。

隣同士って、 “仲良し” って感じがするなあ。

これからはいつもカウンター席を選ぶことにしよう。


・・・と言っても、次があったらだけど。


いや!

“次” は自分で作るんだ!


隣で赤いカップのホットチョコレートをふーふーと冷ましている茉莉ちゃんの真剣な横顔がかわいい。

そうっと一口飲んで・・・目を上げて。


「あ・・・。」


目が合うとそうやって、まばたきをしながら下を向くところ・・・ずっと変わらないね。


「これ、美味しいけど、思ったよりも大きかったなあ。茉莉ちゃんも一緒に食べない?」


「え? ・・・いいの?」


「うん。全部一人で食べたら、お腹をこわしそうな気がする。」


「お腹をって・・・、ふふ、そういうこと、あったね。」


「・・・そうだっけ?」


そんなカッコ悪いこと・・・?


「ふふふ、忘れた? みんながお休みだった日に数馬くんがお腹をこわしてて、機嫌が悪くて。」


ああ、あれか!

あの言い訳、ほんとうに信じてくれたんだ・・・。

素直で優しい茉莉ちゃん。


「そうだったね。あのときは、ほんとうにごめん。」


俺は真実を確かめずに、そんな茉莉ちゃんを傷つけた。


「仕方ないよ、緊急時だもん。それに、ちゃんと謝ってくれたから。」


そうやって、俺を許してくれた。


あのとき、芳輝に言われたんだ。

俺と茉莉ちゃんの間には言葉が足りないって・・・。


「じゃあ、また数馬くんがお腹をこわしたら気の毒だから、わたしも一緒に食べようかな?」


「うん、どうぞ。スプーンは・・・?」


「こっちに付いてるのがあるから。」


残念。「あーん。」はナシか。


でも、いいや!

この調子なら、うまく行くかも!






帰り道のどこかで告白しようと思っていたけど、ちょっと無理な気がしてきた。

どこを見ても人がいっぱい歩いてるし、ベンチも満席。

こんなことなら、さっき、パフェを食べながら言ってしまえばよかった!


「あの・・・、数馬くん。」


「あ、なに?」


そういえば、茉莉ちゃん、お店を出てから黙りがちだ。

俺も考え事をしていたから気付かなかったけど・・・。


「あのう・・・、か・・・、観覧車に乗らない?」


観覧車?

・・・観覧車か! その手があった!


「うん、そうだね。いいよ。」


観覧車なら二人きりだ。

思う存分言えるぞ!




・・・・と、思ったのに。


なんて難しいんだろう。

狭い空間に二人きりって、こんなに気まずいもの?

乗ろうって言い出した茉莉ちゃんも、なんとなく緊張してるし。



何を言ってるんだ!

頑張れ、俺!

早く言わないと、あっという間に一周まわっちゃうぞ!


「あの・・・茉莉ちゃん。」


「はい・・・。」


「俺、その・・・、す・・・、」


次の「き」が出ない!


「す・・・、す・き・・・、すき・・焼きの季節だよねえ。」


馬鹿ーーーー!


「え? すき焼き・・・?」


「あ、あの、茉莉ちゃんはすき焼きの具は何が好き?」


こんなところに「好き」を使いたいんじゃないのに!


「え? ええと、しらたき、かな?」


「ああ、味がしみ込むと美味しいよねー。俺は焼き豆腐。」


ああ、早く終わりにしたい、この話題。


「焼き豆腐?」


「そう。小さいときから一番好きなんだよ。」


何やってんだ、俺は?


「もしかしたら、数馬くんの家では、すき焼きのときは争奪戦になる?」


「もちろんだよ! 男三人の兄弟だからね。作るのが間に合わなくて、待ち時間ばっかり。」


「楽しそう。わたしのうちは、親が『ほら、食べなさい。』ってどんどん取ってくれるの。だから大急ぎで食べなくちゃならなくて、たいへんなの。ふふ。」


あ・・・、でも、笑ってくれた。

緊張が解けた?


うん、俺もだ。

これなら・・・。



あれ?



・・・観覧車?

それに、あのメニュー。




・・・・・芳輝?








もう一話、数馬が続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ