表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メガネに願いを  作者: 虹色
第九章 ハッピー・エンドを目指せ!
90/103

◇◇ どうしたらいいのか分からない! ◇◇


よかった〜!!

お昼だけでもカナちゃんが一緒にいてくれれば、ずいぶん気が休まる。

午前中はずっとパニック状態だったから。

手塚くんには申し訳ないけれど、カナちゃんから言い出してくれたことだし。



だって。

二人だけなんて・・・デートみたいだよね?!



ゆうべからずっと気になっている。

“いいの?” って。



電話のあと、わけがわからなくてパニックになって、結局、芳くんに電話してしまったけれど、芳くんは何も答えてくれなかった。


『わからないことは、全部、数馬に訊かなくちゃだめだよ。』


って笑うだけで。


だから、頑張って訊いた。森川さんのことを。

なかなかストレートに質問ができなくて、ものすごく遠まわしになっちゃったけれど。


そうしたら、数馬くんは質問の意図が分からないという顔をして、普通のクラスメイトだって。


要するに、あの話は桃ちゃんの誤解だったってことらしい。

数馬くんと森川さんは、なんでもなかった。

つまり、数馬くんは森川さんのことをなんとも思っていない・・・。


そんなふうに思ったら、違うパニックが押し寄せてきた。



じゃあ、今日のお出かけは何?!

どうして二人だけなの?!

数馬くんは誤解されてもいいの?!

数馬くんにとって、女の子と二人で出かけるって、どのくらいの意味があるの?!


わからない〜〜〜〜!!



芳くんは、数馬くんに全部訊けって言ったけど、こんな質問できないよ!

こんなことを訊いたら、まるで、期待している答えがあるみたいだもん!

図々しいって思われちゃうもん!



なるべく考えないようにしていても、目が合ったり、腕がぶつかったりするたびに、過剰な反応を押さえるのに精一杯。

お店をまわっているうちに少しは落ち着いてきたけれど、やっぱり恥ずかしくて・・・。

だから、あんまり近くに寄りたくない。でも、あんまり離れたら、嫌っていると勘違いされそうで、それもできない。


だけど・・・ほんとうは、近くにいたいよ〜! でも、恥ずかしい!!


ああ、もう!


心がもっと単純だったらいいのに!

あれこれ思い付かなければ、何もかも、もっと簡単なのに!


「茉莉さん、何にする?」


あ。

お昼ごはんを決めなくちゃ。


広いフードコートには、座席を囲むようにお店が並んでいる。

ハンバーガー、どんぶり物、麺類、肉まん、アイスクリーム・・・食事からデザートまでいろいろ。

まずは、4人でぐるりとメニューをチェック。


「あ、カナちゃん。あそこの甘夏のヨーグルトシェイクが美味しいんだよ。」


「そうなの? 茉莉さん、よく知ってるね。」


「あ、うん・・・。」


しまった。

黙っていればよかった。

先週来たとは言いづらい。

ぼんやりしてるから・・・。


ええい、話題をそらしてしまえ!


「あ。わたし、親子丼にしようかな? みんなは決めた?」


「うん。」

「決まったよ。」


「じゃあ、席を決めて、買いに行こうか。」


この4人のメンバーでわたしが仕切ってるなんて、信じられない・・・。


「ねえ、茉莉さん。」


歩きながらこっそりとカナちゃんが囁く。


「なあに?」


「茉莉さんと日向くんって、メガネがおそろいみたい。ふふ。」


それを狙って買ったメガネだけど、他人から言われると恥ずかしいよ〜!


「あ、え、そう?」


ほんとうは、朝から何度もガラスに映る自分たちをチェックしていた。数馬くんに気付かれないように。

チェックして・・・実を言えば、嬉しくなった。

とても仲良しに見えたから。


「うん! なんだか、すごく可愛いカップルだよ。」


すごく可愛い・・・カップル?

“カップル”って・・・。


「え? あの、やだ、どうしよう? 数馬くんとはまだ・・・。」


まだ決まったわけじゃないのに!


「茉莉さん、いつまでもそんなこと言ってないで、認めちゃった方がいいよ。」


「カナちゃん・・・。」


認めちゃった方が・・・?


はっきりと意思表示をした方がいいってこと?

もしかしたら・・・「告白したら?」ってこと?

芳くんも、「あきらめるなら伝えれば」って言ってたっけ・・・。


もし、数馬くんに「好きです。」って言ったらどうなるんだろう?


ずっと、無理だって思ってきたけれど、もしかしたら・・・?







『バ ―――― ン!!』

「ひっ!」


怖い!

やっぱりヒーローものにすればよかった!

あのとき、恥ずかしがらないで言えばよかった!


数馬くんと一緒に恋愛ものなんて無理だし、子ども用のアニメ映画は周りが幼稚園児ばかりになりそうで却下、動物ものは感動して泣きそうだからダメ。

ほんとうはヒーローものがけっこう好きなんだけど、恥ずかしくて言い出せなかった。

一人では絶対に見に来ることができないから、思い切って「これ!」って言ってしまおうかと思ったけれど・・・。


で、次々と殺人が起こるサスペンスを選んでしまった。


だけど!


こんなに怖いとは思わなかった。

急にドアが開いたり、悲鳴や音が聞こえたり。

ゆらゆらする画面もなんだか不安になるし。

もっと謎解きがメインなのかと思ったのに・・・。


『キャーーーーーッ!』

「わ!」


こんな調子じゃ、お菓子とか食べてる場合じゃないよ。

びっくりするたびに声が出ちゃって、みっともないし。


「茉莉ちゃん。大丈夫?」


ああ、数馬くん。


「ご、ごめんね。うるさい?」


わ、近い。

小さい声で話すから、このくらいじゃないと聞こえないけど・・・、暗くてよかった・・・。


「うるさくないよ。でも、だいぶ怖そうだから。」


「あの、ちょっと・・・びっくりするだけ。」


『そこだ!!』

「きゃっ!」

ガツッ。


痛い!


「イテテ・・・。」


数馬くん?!


?!!

腕につかまっちゃってるよ!!


「ごっ、ご・・、ごめんなさい。」、


離して、離して!

う・・・おでこがズキズキする。


数馬くん・・・メガネをはずしてる?

わたしのおでこが痛いってことは・・・、もしかして、数馬くんのメガネに頭突きを・・・。


「ごめんなさい・・・。」


ホントにわたしって、何をやってもダメだ・・・。


「ぷ。・・・・・くくく。」


笑ってる?


・・・よかった、気を悪くしないでくれて。

そうだよね。

数馬くんが、こんなことくらいで怒るわけがないね。

ほっとしたら、体の力が抜けてきた・・・。


「茉莉ちゃん。」


あ、近い。

なんだかしあわせ〜。

暗くて顔が見えないから安心だし。


「はい。」


「よかったら、腕につかまってていいよ。」


え?!


「あの・・・、でも・・・。」


せっかく解けた緊張がまた・・・。


「心配いらないよ。暗いし、一番後ろだから誰にも見えないよ。」


そ・・・それも心配だけど、もっと心配なのはわたしの心臓なんですけど?!


『ギャーーーーーーッ!!』

「うわ!」


あ。


「そのままでいいよ。」


笑われてる・・・。


「・・・はい。すみません。」


どうか・・・、どうか、ドキドキしているのは映画のせいだと思ってくれますように!



ああ・・・だけど、この安心感。

このまま、ずっとこうやっていたい。



・・・ずっと?



もしも。



もしも、数馬くんにわたしの気持ちを伝えたら、この腕はいつでもわたしに・・・?

今だけじゃなくて、ずっと・・・?







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ