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メガネに願いを  作者: 虹色
第八章 本当ですか?
88/103

◇◇ !! ◇◇


楽しかった・・・。

ちょっと疲れちゃったけれど。



朝から歌を何曲も聞いて、自分たちも歌って、午後の審査発表に表彰式、放課後の打ち上げ。

盛りだくさんの一日だった。

しかも、みんなにお誕生日のお祝いまでしてもらって。



お誕生日。



17才になりました。

ハッピー・バースデイ、わたし。



去年だって、仲良くしていたお友達とはお互いにプレゼントのやり取りはあった。

でも、今年は去年とは全然違う。

プレゼントの数はそれほど変わらないけれど、みんなに「おめでとう!」って言ってもらって。

もちろん、合唱祭と重なっていたせいでもある。

だけど・・・わたしが、クラスのみんなとの距離が近くなっているから。



ほんとうはね。

数馬くんに「おめでとう。」って言われたかった。

律儀で優しい数馬くんなら、会えば絶対に言ってくれたと思う。



・・・未練がましいね。



森川さんを好きな数馬くんに言われても、嬉しいかもしれないけれど、それと同時につらいと思う。

だから、生徒会を休む理由ができてちょうどよかったんだよ。



でも・・・。



やっぱり、会いたかったな・・・。



7組の合唱の伴奏をしていた数馬くんは、すごく素敵だった。

指揮者とも息が合っていて、歌にもよく合わせてあって。

なによりも、楽しそうで。


あんなに熱心に練習していたんだものね。

優勝できてよかったね。

おめでとう、数馬くん。

それに、伴奏を楽しむことができたことも。


わたしも、なんだかとても嬉しかった。

見ていただけなのに、変だよね。

わたしには何も・・・、数馬くんはお友達だから、一緒に喜んでもいいのかな?


ねえ、カメさん。

どう思う?


お友達だったら、どのくらいまで許されるの?




・・・?



携帯が・・・メール、じゃない、電話?


数馬くん?!


え? どうして? 今、何時? ・・・10時、だよ?


どうしよう?!

出ていいの?!

お友達って・・・この時間でもあり?!


ああ、いえ、時間は関係ないのかな?

そうだよね。

生徒会の連絡かも知れないし。今日、休んだから。


だけど。

だけどだけどだけど・・・、お誕生日だったりするし・・・。


どうしよう?!

ドキドキしてきちゃった!


ダメダメダメ。

期待しちゃダメだよ!

せっかくあきらめたんだから。

今週はずっと大丈夫だったのに!


あああ・・・、だけど、どうしよう?!

でも、迷っているうちに切れちゃったら・・・。


出なくちゃ!


「あのっ、はいっ。ええと、大野です。」


だめだ。

心臓がバクバクして、手が震えてる。

数馬くんから見えなくてよかった・・・。


『あの、茉莉ちゃん? こんな時間にごめん。今・・・大丈夫?』


「あ、はい。あの、大丈夫です。自分の部屋にいます。」


心臓は大丈夫じゃないかも〜。

そうだ。

カメさんを抱いていよう。


・・・うん。なんとなく落ち着く。


『ええと・・・、そのまま聞いてて。』


「あ・・・、はい・・・。」


なんだろう?


カタリ、と音がして、何秒かの間。それから・・・。




ピアノ・・・?




ピアノの音だ。


「HAPPY BIRTHDAY TO YOU」 ――― 。



数馬くんが弾いている? あのお部屋で?


お誕生日のプレゼント?

わたしに?

数馬くんから・・・?




・・・あ。

涙が ――― 。




数馬くん。


どうしよう?

涙が・・・止まりません・・・。



『茉莉ちゃん?』


「はい・・・。」


だめ。

泣いていることに気付かれちゃう。


『お誕生日、おめでとう。』


「はい・・・。ありがとう・・・。ありがとう、ございます・・・。」


嬉しい。

こんなに嬉しい。


こんなに・・・数馬くんのことが好き。


『あの・・・、茉莉ちゃん。』


「はい。」


涙、止まって。

お願い。


『俺・・・、その、茉莉ちゃんに伝えようと思って・・・、あの・・・』


「はい。」


ああ・・・、ティッシュ、ティッシュ。

早く。


『あの、俺、茉莉ちゃんが』

『あーーーー!! 数馬だ!!』


なに?!

誰?!


『兄ちゃん?!』

『こんな時間に明かりがもれてると思ったら、電話かよ〜!』


ああ、お兄さん?

すごく大きな声・・・。


『あの、ちょっと待って・・・うわ! 兄ちゃん!』


数馬くん?

わ! なんだか雑音が・・・。


『もしもし〜。茉莉ちゃ〜ん。』


あ、替わったんだ。

近くで数馬くんの声もする・・・。


「はい。こんばんは。」


『久しぶり〜。亮輔だよ〜♪』


なんでしょう? ものすごくご機嫌・・・。


「はい、お久しぶりです。あの、よく分かりましたね、わたしだって。」


『え〜、分かるよ〜。うるさい、数馬。だってさ〜、数馬がこんなところに隠れて電話するなんて、茉莉ちゃんしかありえないじゃーん。』


え?


『兄ちゃん! 返せ!』


『やだよ! もっと茉莉ちゃんと話すんだ!』


ガタガタ音がするけど・・・、追いかけっこでもしてる?

いえ、それより、さっきの言葉の意味は・・・?


「あの、」


『今日さあ、・・・うるさい、数馬。俺、合コンだったんだよ〜。』


「あ、ああ・・、そうなんですか?」


酔っぱらってる・・・ってこと?


『兄ちゃん!』


まだドタバタ聞こえる。

数馬くんの家って、広いもんね・・・。


『そう。卒業研究で疲れちゃったから、久しぶりに楽しく過ごそうと思ってさあ。』


「そうなんですか。よかったですね。」


やっぱり酔っぱらってるみたい。

・・・なんだか、何かを叩く音がする?


『兄ちゃん!』


数馬くんの声が遠い。

どこかの部屋に入った?


この電話、どうなるの?

数馬くんの用事は・・・?


『よくないよ〜。女の子はみんな、俺の好みじゃなかったんだから〜。』


「そ、そうなんですか?」


でも、お酒をたくさん飲んでるってことは、楽しかったのでは・・・?


『そうだよ。俺はやっぱり、茉莉ちゃんみたいな・・・ん、なんだ?』


『兄ちゃん! 返せ!』


あ、数馬くんの声が近くに・・・。


『なんだよ、お前、トイレのカギ開けるなんて失礼だぞ!』


『うるさい!』


トイレ?

トイレにこもってたんだ・・・。


『茉莉ちゃん!』


わ!

数馬くんだ!


「は、はいっ。」

『数馬〜!』


わたしの声、聞こえてるかな?

ああ、またバタバタしてる・・・。


『変な兄貴でごめん! 明日、10時に迎えに行くから! じゃあ!』


「え? あ、あの、数馬く・・・」


切れてる・・・。



明日・・・10時に?




迎えに来る?




えええええぇ?!!




数馬くんが?!

なんで?!

意味がわからない!!



・・・ごめんなさい。ウソです。

ほんとうは・・・希望的観測がむくむくと・・・。


だって。



さっきのピアノ。

亮輔さんの言葉。


だけど・・・。



違うかもしれない。

違ったらショックが大き過ぎる。

それに、森川さんは?



ああ、どうしよう?

断った方がいいのかも。

最初から期待しなければ、がっかりすることもない。・・・だけど!!



今さら断れないよ〜!

わたしから数馬くんに電話するなんて無理だし・・・、ホントは行きたい。



だけど、二人で?

なんだか、それも無理な気がするんだけど?!

それに、出かけた先で森川さんと待ち合わせてたりしたら。

「じゃあ、今日はここまでね。」なんて・・・。



ああ、もう、どうしよう?!

わけが分からなくなってきた。



そうだ。


芳くんに相談してみようかな。

よく分からないけど、なんとなく芳くんて何でも知ってそうな気がするもんね。

今までの経過も知ってるし・・・。



・・・でも、こんな相談?

自分がどうしたらいいのか分からないなんて、どうやって相談したらいいの?



ああ・・・、どうしよう〜〜〜〜?!!








第八章はここまでです。

次から第九章に入ります。最終章です。

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