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メガネに願いを  作者: 虹色
第八章 本当ですか?
85/103

◆◆ 茉莉ちゃん?! ◆◆


・・・・・?


携帯が光ってる。



もしかして、茉莉ちゃんから何か?!



・・・違う。芳輝だ。

日曜の夜に?

何か明日の連絡とか?


・・・・写真だけって、なんだよ?




「な?!!」




な・・・なんだよ、これ?!

どうして茉莉ちゃんの?!

こんなに無邪気に笑って・・・、こんなにアップで・・・。



どこだ?

私服?

後ろの景色・・・夜景? どこか高いところ?

鉄骨・・・観覧車?


茉莉ちゃんと・・・芳輝が?

一緒に? 日曜の夜に?



「うそだろ・・・?」



どうして?



どうしてって・・・決まってる?

二人で・・・観覧車で。



・・・だめだ!



そんなこと、認めたくない!

茉莉ちゃんと芳輝だなんて・・・絶対に!


問いただしてやる!




『もしもし?』


「・・・芳輝?」


『そうやって電話をかけてきたってことは、数馬の気持ちは変わってないってことだな。』


いつもと同じ余裕の声。

俺より優位に立っている証?


「俺の気持ち? どういう意味・・・、いや、あの写真はなんだ?」


『凄むなよ。写真? 数馬が欲しいかな、と思って。』


「はぐらかすなよ。どうしてお前があんな写真を持ってる?」


『一緒に出かけたから。今日。』



やっぱり。

予想していた答えだけど、実際に聞くとショックが大きい。


決定的な言葉に体の力が抜ける。

ずるずると、床に座り込んでしまう。


茉莉ちゃん・・・。


「どうして・・・。いつから・・・?」


『いつから茉莉花と付き合ってるのかってこと? ・・・まあ、今日はそういうのじゃないよ。』


「違う? じゃあ・・・?」


希望はまだある?

だけど。


『茉莉花が失恋したっていうから、気晴らしに連れ出してあげただけ。』


「失恋?! 茉莉ちゃんが?!」


『そう。』


「誰に?!」


『それは言えないよ。茉莉花のプライバシーだから。』


「そう・・・だよな。」


茉莉ちゃんが失恋?

じゃあ、金曜日に元気がなかったのもそのせい?


でも・・・茉莉ちゃんに好きなひとがいた?

その相手に失恋した?

つまり、茉莉ちゃんが好きだったのは俺じゃない・・・。


「だけど、どうして芳輝が・・・。」


『俺には話しやすいみたいだよ。』


そうだった・・・。


芳輝が生徒会に来たばかりのころから、茉莉ちゃんは芳輝とは遠慮なく話していた。

この前だって、ふたりで仲良く遊んでいたし、修学旅行のときも芳輝の話題が・・・。


でも、好きな相手はほかにいた・・・金曜日までは。

その失恋の痛みを打ち明けた相手は、俺ではなく芳輝・・・。


茉莉ちゃん。

俺ではダメだった?

ほかの誰かを好きだった話を聞くのは悲しいけど、せめて、茉莉ちゃんがつらいときにはそばにいてあげたかったのに。


『なあ、数馬。そろそろ自分の立場をはっきりさせた方がいいよ。』


え?


「俺の・・・立場?」


『そう。いつまでもとぼけたままでいるなら・・・どうなるか分からないよ。』


「どうなるかって・・・?」


『まあ・・・、友情がいつの間にか、ってこともあるってこと。』


友情がいつの間にか・・・愛情に変わる?


「それは、芳輝が・・」


『ノーコメント。』


「芳輝。」


『俺に訊く前に、自分の立場をはっきりさせろ。茉莉花はほんとうにいい子だよ。悲しませたら可哀そうだ。』


「そんなことは分かってる。お前に言われなくても、ずっと見てきたんだから。」


『お、その調子。だけど、油断すると危ないぞ。』


危ない?


「芳輝?」


『じゃあな。また明日。』


芳輝・・・。


結局、よくわからないままだ。

芳輝の言葉は単なるアドバイスなのか、俺に対する挑戦なのか・・・。


俺の立場をはっきりさせろ?

俺の立場・・・茉莉ちゃんに対する?


俺が、茉莉ちゃんへの気持ちを、誰に対しても認めないことを言ってるのか?


誰に対しても・・・とっくに気付いているらしい翔にも、芳輝にも、村井にも。

だって、茉莉ちゃんに知れたら困るから。



・・・いや。

ほんとうは違う。


茉莉ちゃんに拒絶されるのが・・・怖いから。



だけど。



怖がっているから、いざというときに、茉莉ちゃんは俺を頼ってくれなかった?

俺じゃなく、茉莉ちゃんとありのままに向き合っている芳輝を相談相手に選んだ?

一緒に出かけて・・・あんなに楽しそうに笑って。



そうなのか?



分からない・・・。



今からでも間に合うのか・・・?







「よう、数馬! おはよう!」


「ああ、翔か。おはよう。同じ電車なんて、めずらしいな。」


「そうだな。今日は朝練がないから。」


「ふうん。」


テストの日にも一緒になったことなんてないのに。


「なあ、数馬。俺、きのう、会ったぜ。」


「誰に?」


「和田と大野。」


え?!


「あの二人って、仲がいいんだな。大野があんなに強気なところって、初めて見たよ。」


「あ、ああ。生徒会でもよく話してるよ。」


茉莉ちゃんと芳輝。

俺にはめったに見せない遠慮のなさを、芳輝には簡単に発揮する茉莉ちゃん・・・。


「それに、けっこうお洒落してたぜ、二人とも。」


「ふうん、そう。」


写真ではよく見えなかったけど・・・あとでじっくり見てみよう。


「大野って、一年のころに比べると、ずいぶん明るくなっただろ?」


「え、あ、うん、そうだな。」


「それに、性格が素直だからクラスの男の中でも評判がよくて、修学旅行のときに告白したヤツもいたらしいぜ。」


「告白?!」


「まあ、『好きなひとがいる。』って断られたらしいけど。」


好きなひとがいる・・・。


そうか・・・。

修学旅行中はそうだったんだよな。


あのとき、メールのやりとりくらいでいい気になってた俺って、いったい何だったんだろう?


「数馬、いいのか?」


「・・・え?」


「お前、出遅れてるぞ。」


出遅れてる・・・。


「それとも、俺の勘違いなのか?」


翔の勘違い?

そうじゃない。



――― 「自分の立場をはっきりさせろ。」



芳輝・・・。


つまり、こういうことだよな。


「勘違いじゃないよ。」


そう。

翔の勘違いじゃない。

俺は茉莉ちゃんが好きだ。

好きで・・・誰にも渡したくない。


「そうか。」


ニヤリと口の端をあげて笑う翔。

それから、背中に平手で「バン!」と一発。


「じゃあ、しっかりやれよ!」


「痛いよ。」


でも、サンキュー。






茉莉ちゃんが失恋した相手って、いったい誰だったんだろう?

まあ、今さら知っても意味がないか・・・。


いや、だけど、それがわかれば、茉莉ちゃんがどんな男が好きなのか分かる。

・・・けど、やっぱり意味がないな。

俺とまるっきり違うタイプだったら、自信がなくなるだけだし。

逆に、似てない方がいいかも知れない。



馬鹿だな。


終わったことはもう考えるな!

茉莉ちゃんに、俺のことを好きになってもらわなくちゃいけないんだから。

よく考えたらチャンスかもしれない。

今なら、茉莉ちゃんの心の中に、邪魔者はいない。



・・・いるのか?


芳輝にはリードされてるかも。

茉莉ちゃんは、芳輝と二人で出かけることをOKした。

翔も「出遅れてる。」って言ってたし。


今のところ、二人の間には友情だけしかないかも知れないけど、時間が経つにつれて、変わっていく可能性は小さくはない・・・。



芳輝と・・・茉莉ちゃん?



ダメだ!

芳輝なんかに譲れない! 絶対に!

4月からずっと見守ってきたんだから。(・・・一年のときは、気付かなくてごめん。)



そうだった!

芳輝のメールのあと、忘れていたけど・・・金曜日の茉莉ちゃんの言葉。それに態度。

やっぱりダメなんだろうか? ・・・ダメなのかも?



ダメなら・・・最後にチャレンジしてみるのも悪くないかな。

玉砕したらしたで、きっとすっきりする。



うん。

好きだって言おう。



でも、どうやって? いつ?


それに・・・その前にやらなくちゃいけないことがある。







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