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メガネに願いを  作者: 虹色
第五章 近づく文化祭
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◇◆ 失恋決定? ◇◆

今回は変則で、茉莉花 & 数馬 です。


思ったより長引いちゃったな。

あと2週間ちょっとあるんだから・・・ソノちゃんにとっては “2週間ちょっとしかない” ってことみたいだけど。

劇って、細かい手直しとか、決めなくちゃいけないことがたくさんあるんだなあ・・・。

やればやるほど自信がなくなってくるのはどうしてだろう?



でも!


生徒会室に行けば、数馬くんがいる。

ほかのメンバーも。

みんなの顔を見るだけで元気が出る。

みんな、わたしがいることを当たり前って思ってくれている。

それにたぶん・・・ちょっとは、わたしがいて楽しいって。・・・そう思ってもいいよね?


それが嬉しい。



「こんにちは。」


・・・あれ?


「ええと、遅くなりました・・・。数馬くん、一人?」


「うん。」


困る。

嬉しいけど、困っちゃう。


「あの・・・、ごめんなさい、みんないないのに、・・・遅くなって。」


ああ、どうしよう?

どこに座ろう?

・・・とりあえず、一番遠い場所・・・より、ちょっと近く。斜め前。


「さっきまでいたんだよ、虎次郎と芳輝が。でも、虎次郎は家の用事で、芳輝は頭痛がするって言って。」


帰っちゃったんだ・・・。


「・・・そうなの? 珍しいね。芳くん、頭痛だなんて、大丈夫・・・か、な・・・。」


数馬くん・・・?

なんだか様子が・・・?


「本人は勉強のし過ぎなんて言ってたけど? 心配だったら電話でもしてみたら?」


なんだろう?

数馬くん、機嫌が悪い?


一度もこっちを見ないし、笑わない。

パソコンの画面を見ているだけで・・・。


どうしよう?

わからない。

胸騒ぎ・・・?

わたし、何かした?


「き・・・、今日は、一年生は、来ないんだった・・よね・・・?」


な、に?

今、一瞬、視線が・・・。


「うん。さっき、慎也がちょっとだけ顔を出したけど。」


「ああ・・・そうなの。」


怖い。

こんな数馬くん、初めて。

どうしたらいいのかわからない。


どうして?

何があったの?

わたし、何をしたの?


「あの、数馬くん・・・?」


「ごめん。ちょっとトイレに行ってくる。」


数馬くん・・・。

わたしのことを怒ってるの・・・?




◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




俺は・・・なにをやってるんだ?

茉莉ちゃんには何も悪いところなんてないのに。


もしもあのウワサがほんとうで、茉莉ちゃんが手塚と付き合っていたとしても。

茉莉ちゃんと芳輝が両想いだったとしても。



わかっているのに・・・自分を抑えられない。

どうしたらいいのかわからない。

茉莉ちゃん、あんなに不安そうな顔をして・・・。


かわいそうだけど、穏やかな気分になれない。

芳輝のことも、手塚のことも、本人に確かめたわけじゃない。なのに・・・。



・・・確かめなくちゃ。



どうせあきらめなくちゃならないなら、早い方がいい。

いつまでもうじうじして、茉莉ちゃんに当てこすりを言ったりするのはみっともない。



確かめなくちゃ。


でも、なんて・・・?




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




沈黙が重い。


どうしたらいいの?

何を怒っているのかって訊いたら、教えてくれるの?


・・・日誌が。

口を開くきっかけになる・・・?



「か・・・、数馬くん。」


「・・・なに?」


やっぱりこっちを向いてくれない。


「今日は・・・何か、話し合ったことは・・・ありました・・か?」


「・・・いや、特に何も。」


「そう・・・ですか。」



ああ・・・。

どうしよう?

わからない。


手が震えてしまう。

日誌の字が・・・・。


数馬くん。

どうして?

きのうまでは普通にお話しできていたのに。



「茉莉ちゃん。」


「はっ、はい!」


なんだろう? なんだろう? なんだろう?

何を訊かれるの?

そんなに真剣な顔で?


「最近・・・、」


最近・・・?


「手塚と会ってるの?」


手塚?

・・・手塚くんと会ったかって?


「あの・・・、はい。おととい・・・。」


いけないことだったの?


「・・・そう。」


「あの、特に何かあったわけじゃ・・・。」


生徒会の内部情報とか、話したわけじゃないし・・・。


「そう?」


「うん。ただ・・・、一葉の文化祭に来ないかって言われて・・・。」


「文化祭?」


あ。

やっと顔を上げてくれた・・・けど・・・。


どうしてそんなに怒ってるの・・・?


「・・・はい。」


怖い。

悲しい。


「あの、手塚くんは・・・その、」


あ。

手塚くんのお目当てがカナちゃんだなんて、勝手に言うわけには・・・いかない、よね。


「い・・、行っちゃいけないんだったら」


「べつに、そんなことないよ。」


途中で遮った・・・。

わたしとは話したくない?


数馬くん。

それは、笑顔のつもり?


「一葉は私立だから、文化祭は大掛かりで賑やかだって聞いてるよ。楽しんでおいでよ。」


「うん・・・、そうだね。」


冷たい笑顔。

だめだ。涙が出そう。


でも、ここで泣いたりしちゃダメ。

あとで・・・、うちに帰って一人になってから。





「鍵はわたしが返してきます。田嶋先生に相談したいことがあるので・・・待たないで帰っていいですから。」


あれから・・・何も話せなかった。


嫌われたんだ。

話したくないほど。

視界に入れたくないほど。

きっと、一緒に生徒会室にいることも許せないんだろう。


でも・・・どうして?


「・・・わかった。じゃあ。」


「あの、か・・・日向くん。」


「なに?」


やっぱり振り向いてくれない・・・。


「今度の日曜日、歌のレッスンにうかがうけど、すぐに帰ります。お夕飯は・・・一度いただくって言ったのに申し訳ないけれど・・・。」


「キャンセルだね。わかった。」


きのうまで、あんなに楽しかったのに。

ほんの一瞬、視線が合うだけでも幸せだったのに。

わたしも生徒会の仲間として、認められていると思っていたのに。


どうして?



・・・理由なんて、わかっても仕方ない。

もう嫌われてしまったんだから。



さようなら、日向くん。

でもね・・・。


あきらめられるまで、もうしばらく好きでいさせてください。



話さなくてもいい。

視線を合わせなくてもいい。

近くにいることだけ、許してください。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




茉莉ちゃん・・・。


あんなに悲しそうな声。

きのうまでは・・・いや、生徒会室に現れたときも、楽しげな声だったのに。


俺のせいだ。


俺が勝手に期待し過ぎていたんだ。



茉莉ちゃんが誰と付き合おうと、それは茉莉ちゃんの自由だ。

今まで俺のことは友達だと思ってくれていたのに・・・、それが好意だったらって勝手に期待して、違ったと分かったら裏切られたような気になって。

あんなに不機嫌な態度を最後まで・・・。


自分勝手な思い込みで、茉莉ちゃんをまた傷つけてしまった・・・。

こんな男じゃ、茉莉ちゃんを好きになる資格なんかない。

きっと、星野先輩は見抜いていたんだ。俺が器の小さい男だって。



だけど・・・こんなにつらいなんて。



明日から、どんな顔をして生徒会室に行ったらいい?

あそこにいたら、顔を合わせなくちゃならないし、話もしなくちゃならない。

人間ができてない俺のことだ、きっとまた茉莉ちゃんに嫌な思いをさせてしまうに決まってる。



――― 行きたくない。



こんなこと思うのは初めてだ。

でも、自分が弱いせいで、茉莉ちゃんを傷つけてしまうのがつらい。

そんな自分がいやだ。



・・・電話?

芳輝から? 珍しいな。


「はい。」


『数馬。茉莉花と話した?』


いきなりその話?

そんなに気になるのか?


「話したよ。涼子ちゃんの話、ほんとうのことだった。」


『ええっ?! そんなはず、ないだろ?!』


何だよ?

信じられないのか?


「間違いないよ。茉莉ちゃんは手塚と付き合ってるよ。文化祭にも招待されたってさ。」


『あり得ない。数馬、いったい茉莉花になんて訊いたんだ?』


「信じられないなら、自分で確認すればいいじゃないか。なんで俺に訊いてくるんだよ?」


『・・・そうだな。数馬、明日も生徒会に行くよな?』


「ああ。」


王子の代役の話を振られるのも不愉快だし。


『じゃあ、明日、涼子に確認するから。そのときは、数馬にも一緒にいてもらうからな。』


一人で聞くのが怖いのか?

本人が認めてるのに、わざわざ他人に確認するなんて、意味ないじゃないか。


「わかったよ。じゃあな。」




芳輝は・・・どうしてあんなにきっぱりと否定するんだろう?

やっぱり、茉莉ちゃんと芳輝のあいだには、何か確かなものがあるんだろうか? 俺にはない、確かなものが・・・?







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