表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メガネに願いを  作者: 虹色
第五章 近づく文化祭
47/103

◆◆ うわさ ◆◆


「聞いたぞー、数馬。」


「何を?」


あーあ。

今日も茉莉ちゃんは劇の打ち合わせで遅くなるって。

最近、毎日なんだよな・・・。

今日は1年生も来られないって言ってたし、虎次郎と芳輝と俺の男3人じゃ、なんとなく気合いが・・・。


「お前、文化祭の劇で王子役の候補になってるんだろう? うちのクラスで話題になってたぞ。」


ああ、その話か。


「俺、やらないよ。佐藤がそのまま出るって言ってるし。」


「ふーん。浜野とキスのふりだけでもできるってだけで、立候補したいヤツがいくらでもいるのに。」


「そうらしいけど、俺はべつに興味ないから。」


「興味がないって、浜野にか? それとも女子全部?」


「え?」


「くく・・・。虎次郎、それを数馬に訊くのか?」


「今ならOKだろ? さっきの話をしながら、うちのクラスの女子が、数馬は女に興味がないんじゃないかって言ってたぜ。」


え?


「なんで? どういう意味で・・・?」


「数馬には浮いたウワサがないからじゃないか? みんなに親切だけど、女子が近付こうとしても、一定以上は近付けないって。」


「女子が “女に興味がない” って言ったら、裏の意味があるんじゃないかな?」


「裏の意味・・・?」


芳輝・・・。

その目の煌めきが怖い・・・。


「半分は “悔しい” だと思うけど、あとの半分は」


あとの半分は?


「女じゃなくて、男に興味が、うわっ!」


「それ以上言うな! 気色悪い! 俺はちゃんと」


「あはははは! 苦しい! 手を放せよ! はははは! わかってるよ! そんなにむきになるなよ! もう、数馬をからかうと面白いなあ! あはははは!」


涙まで流して笑ってるよ。まったく・・・。


「自分たちだって、決まった相手はいないじゃないか。なんで俺だけ。」


「え? 俺、いるぜ。」


「え?」


うそ?

虎次郎に?

一番、女に興味なさそうなのに?


「いつから?」


「うーんと・・・、去年の今ごろか?」


そんなに前から?!


「なんで?! ・・・じゃなくて、どこの? うちの学校?」


「剣道の道場で一緒の。うーん、先輩っていうか、後輩っていうか・・・。年は相手が一つ上だけど、道場では俺の方が先輩。」


年上!


「そんなに驚く? たしかにここではそういう話をしたことはなかったけど・・・。」


「俺は知ってたよ。去年、聞いたよな?」


そうか・・・。

芳輝は前から知り合いなんだっけ。


あれ?

もしかしたら、遅れをとってるのは俺だけなのか?


「よ・・・、芳輝は・・・?」


「え?」


「彼女って。」


「俺? 俺は、今のところはいない。」


“今のところは” ・・・。

微妙だ。

前はいたのか、もうすぐできるのか。


そのにこにこ笑ってるところがすごく気になる・・・。


「だ、・・・誰か、いるのか、その・・・。」


「好きな相手? ・・・そうだな、数馬が言うなら言うけど?」


「えっ?! な、なんで、俺が、って・・・?」


なんでそんな目で俺を見る?!


「お、俺はべつに、誰も・・・。」


言えるわけないだろ!

いつもこのメンバーと一緒にいるんだから!

知られたら恥ずかしすぎる!


「そう。じゃあ、俺も言わない。」


「・・・なんで?」


「その方が面白いから。」


「プッ・・・。」


虎次郎に笑われた?!

芳輝も相変わらずにこにこと・・・。


どうして・・・?


「先輩! 先輩!」


「あれ、慎也? 今日は休みじゃなかったのか? そんなに慌てて・・・」


「先輩! あれ? ジャスミン先輩は?!」


「今日はまだ来てないけど・・・。」


茉莉ちゃんに訊きたいこと?

なんだか、顔色が悪いけど・・・?


「どうしたんだよ?」


走った勢いで息を切らしている慎也に、虎次郎がのんびりの態度を崩さないまま尋ねる。


「ジ・・、ジャスミン先輩に、彼氏ができたってほんとうですか?!」


「彼氏?」

「え?」

「茉莉花に?」


うそだろ?!

虎次郎と芳輝は・・・やっぱり知らなかったよな?


「慎也。その話、どこで聞いた?」


虎次郎・・・落ち着いてるな。さすがだ。


「涼子が、予備校で知り合った一葉高校の生徒から聞いたって。相手も生徒会に入ってる一年生で。」


一葉高校?


「茉莉ちゃんの相手って・・・?」


「一葉高校の生徒会長。」


手塚?!


「涼子が、その話を聞いたあと、ジャスミン先輩が一葉との交流会の次の日に楽しそうにしていたって思い出して・・・。そのときに『素敵な出会いでもあったんですか?』って訊いたら、先輩は『新しい出会いなんかなかった。』って答えたけど、すごく楽しそうだったって。」


「それが・・・?」


芳輝・・・。

その真剣な表情は・・・やっぱり?


「一葉の生徒会長って、ジャスミン先輩の中学の同級生なんですよね?!」


つまり、 “新しい出会い” ではない・・・。


「僕たちのジャスミン先輩を、ほかの学校にとられるなんていやです!」



・・・・手塚と? 茉莉ちゃんが? そんな!

ああ・・・頭がクラクラする!


あんなに・・・、夏休み中、あんなにたくさんの時間を一緒に過ごしたのに。・・・個人的にではないけど。

でも、この前だって・・・。

なのに、茉莉ちゃんは何も言ってくれなかった・・・。



だけど、そういえば、思い当たる。


地区生徒会会議の帰り、電車の中で、俺をはさんで茉莉ちゃんと手塚は話がはずんでいた。

交流会では、集合場所に一緒に来た。

食事のときも、手塚は茉莉ちゃんの隣に椅子を持って行ってずっと・・・。



「慎也。その話、誰かにしたか?」


芳輝・・・。

お前、どうしてそんなに落ち着いていられるんだ?


「い、いいえ、してません、今、聞いたばかりなんで。潤も一緒に。」


「そうか。じゃあ、戻って潤に口止めしたほうがいいな。」


「は、はい。」


「涼子は今、校内にいるのか?」


「あ、いいえ。これから買い出しに行って、そのまま帰るって。明日はこっちに来るって言ってましたけど・・・。」


「そうか。じゃあ、確認は明日だな。それまで、この話を誰にもしないように電話でもメールでもしといてくれないか?」


「分かりました。」


「頼んだよ。」


「はい。じゃあ、急いで行きます。」


芳輝。

お前、この話が間違いだって、確信を持っているのか?

もしかして、お前と茉莉ちゃんのあいだには、何か特別な絆があったりするんじゃ・・・?


「数馬。」


「あ、ええと。」


微笑んだ?

芳輝が、俺に?


「今日、茉莉花は来るんだよな?」


「え? あ、うん。来るって言ってた。」


茉莉ちゃん・・・、会うのが怖い。


「じゃあ、大丈夫だな。俺、今日は帰るから。」


え?


「帰る・・・?」


「うん。なんだか頭が痛いんだよ。勉強のし過ぎかも。」


「う、うん・・・、わかった。気を付けて。」


「え? 芳輝も?」


“も” ?


「数馬、悪い。俺、今日は早く帰れって、母親に言われてたんだよ。今、思い出した。」


「え? そう・・・なんだ?」


虎次郎がそんなこと言うのって、初めてだ・・・。。


「悪いな。茉莉花が来るまで一人になるけど、数馬なら大丈夫だよな?」


「うん・・・、まあ・・・。」


「じゃあな、数馬。」


「悪いね。今日ちゃんと休めば、明日は元気になると思うから。」


「う、うん。じゃあ。」



・・・一人になっちゃった。


茉莉ちゃんが来たら・・・俺はどうしたらいいんだろう・・・?







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ