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メガネに願いを  作者: 虹色
第五章 近づく文化祭
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◆◆ BAD or GOOD ? ◆◆


ほんとうに驚いた。

あんなところで星野先輩と会うなんて。

まさにバッド・タイミング・・・だよな。



星野先輩、気付いたかな?

立ち話をしているだけに見えた? あんな場所だし。

それとも、俺が茉莉ちゃんの瞳に魅入られていたことに気付いた? 俺が茉莉ちゃんに惹かれていることも・・・?

だから、あんな言い方をしたんだろうか?



「ジャスを任せられる相手かどうか」


「容姿端麗、学業優秀、スポーツ万能、誠実で温和な性格」



はあ・・・・。


絶対に俺じゃない。

どう考えても、俺を牽制しようとして言われたとしか思えない。


しかも、あの条件って “とりあえず” だった。

つまり、あれが基本で、その上にプラスアルファが必要ってことだよな? それは何だ?



リーダーシップ?

・・・・足りないな。


経済力?

うーん・・・、うちはそこそこかも知れないけど、一生遊んで暮らせるわけじゃないし、親の金を当てにするようじゃなあ・・・。

俺が将来どのくらい稼げるようになるのかは、まったく不明だ。


包容力って、よく言われるけど・・・。

こんなに自信がなくちゃ、そんなものどこにあるんだか。



そういえば、「九重にはけっこういる」とも言ってたな。



・・・もしかしたら!

星野先輩の中では、もう誰か候補者が決まっているんじゃないのか?!


だとすると・・・?

例えば?



芳輝は英語ならいつもトップだ。

英検1級ってことは、話す方もバッチリなんだろう。

ほかの科目だって、特に苦労している様子はない。

細身で背が高いし、顔だってまあまあだ・・・いや、悔しいけど、整った顔立ちっていうのはああいうのを言うんだと思う。

スポーツ・・・は中学ではサッカー部だったって聞いたけど。

それに、けっこう縁の下の力持ちタイプで、みんなのことをフォローしてくれてるし、クールな顔つきとは裏腹に穏やかな性格だよな。茉莉ちゃんにもいつも優しい・・・。


芳輝だけじゃないな。


虎次郎だって、性格も見た目も男らしいよな?

剣道を長くやってれば精神的にも鍛えられてるだろうし、俺よりもずっとリーダーシップがありそうだ。

声はデカいけど、誠実で温和な性格っていうのも当てはまる。

女の子を守って・・・守り通せる男って言ったら、俺が知っている中ではたぶん虎次郎が一番だな。


そういえば、星野先輩は栗原も知ってるんだっけ。


栗原はスポーツなら何でも得意だったな。

背が高いし・・・最近、また伸びたんじゃないのか? どこを歩いていても、すぐに目に付くもんな。

それに、乱れたように見える髪型も制服も、実はけっこう気を遣っているような気がする。俺が髪も制服も普通にしているのは、どうやったらいいのか、よくわからないからだ。

性格は明るいし、人なつっこい。あいつが怒ったところなんて、見たことがない。

去年は、クラスの女子が栗原のことをうわさしているのを何度か聞いたっけ。

成績はよくわからないけど、うちの学校に通ってるっていうだけで、このあたりでは “勉強ができる生徒” って思われてるよな?



・・・やっぱり、どう見ても俺じゃないよな。

しかも、ちょっと見回しただけで、3人も出てくるなんて。

先輩は3年生も知ってるんだから、ほかにもっといそうだよな・・・。



あれ?



そういえば、あのノートを渡されたとき、星野先輩、なんて言った?


ええと、何か・・・ちょっとドキッとしたような・・・。

「真面目で純粋」・・・っていうのもあったけど、ええと・・・。


そうだ!


「だんだん感情が表に出るようになった」って言われたんだ!

それで、もしかしたら茉莉ちゃんを気にしてるのがバレてるんじゃないかと・・・。



・・・・・!!



もしかしたら、そうなのか?!


もしかしたら・・・それで星野先輩が、あの呪いの紙を入れたとか?

あれは・・・俺だけへのメッセージなのか?!



そう考えると、すごく当てはまるような気がする。


ただ印刷しただけで挟んであったこと。

去年はまったく聞いたことがなかったこと。

紙は古そうだったけど、古い紙なんて、どこにでもある。


あれを見つけた俺が茉莉ちゃんのことをあきらめるように、さりげなくノートに挟んで・・・。


交流会の帰りに会ったときには、わざわざノートの話を持ち出して、俺にあの紙のことを思い出させようとした。

今日、それでもあきらめていない俺を見て、俺には到底無理な条件を提示した・・・。


バッチリ当てはまってるよ!!



星野先輩!

俺、それほどダメな男ですか?!



一緒に生徒会をやっているあいだは、先輩に気に入られていると思っていたのに。

茉莉ちゃんが生徒会に来はじめたとき、俺に彼女を迎えに行くように言ったのは、俺を信用してくれているからだと思ったのに。


先輩が茉莉ちゃんのことを大切に思っていることはわかります。でも、俺だって、それは同じです。


自分が未熟なことは分かっています。

だから努力を・・・なかなか実を結ばないけど。失敗もするし・・・。



ふぅ・・・・・。



こんなこと、ここで考えていても仕方ないな。


呪いの紙の出どころが星野先輩だって決まったわけじゃない。

よく考えたら、先輩がはっきりと俺に何か言ったことだってない。


確かめてみた方がいいんだろうか?


でも・・・怖い。

はっきりと、ダメだって言われるかも知れない。

だからと言って、茉莉ちゃんをあきらめられるわけじゃないけど・・・。





茉莉ちゃん・・・。


今日は長い一日だった気がする。

・・・忙しかったから?


でも、楽しい時間はあっという間に終わってしまった。


二人で話ができたのは、茉莉ちゃんが来たときと帰るときの行き帰りだけ。

そして、最後のあのとき・・・。



ほんとうに偶然のあの一瞬。

夕焼けになる前の夕方の街。

茉莉ちゃんの明るい茶色の瞳。


あんなに近くで。

あんなにしっかりと。




やっぱり・・・グッド・タイミング、だった?



そうかも知れない。

あの時点で声をかけられなければ、たぶん、間違いなく、俺は茉莉ちゃんに手を伸ばしていた。


手を伸ばして・・・どうしようとしたのかは分からないけど・・・。


抱き寄せていたか、手を握っていたか、頬に触れていたか・・・。

とにかく、あのままだったら止まらなかったと思う。



あんな駅前で?

人がたくさん通っているのに?



・・・そんなこと、気にならなかった。

あの場には、俺と茉莉ちゃんだけ。

周りのことなんて、意識に入って来なかった。



あんな場所で茉莉ちゃんに何かしたりしたら、どんなことになっていたか・・・。


悲鳴をあげられた?

突き飛ばされて、逃げられた?

平手打ち?

もしかしたら、びっくりした茉莉ちゃんは動けなくて、エスカレートした俺がとんでもない行動に・・・?!


怖い・・・。


ほんとうに、星野先輩が現れてくれてよかった・・・。

でなければ、茉莉ちゃんを傷つけてしまうところだった。場合によっては、俺は犯罪者になっていたかも・・・。



だけど、あのとき。



今、思い出しても・・・茉莉ちゃんが目の前にいるような気がする。

あの瞳に吸い込まれそうだ。

手を伸ばして、なめらかな頬に触れて・・・それから・・・。


それから・・・?




あ。


メガネがぶつかった。




うーーーん・・・。







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