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メガネに願いを  作者: 虹色
第一章 決心
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◆◆ 新しいメンバー? ◆◆


「2年生は、今年も生徒会役員に立候補する?」


入学式に在校生代表として出席したあと、生徒会室に集まった俺たちに、会長の星野先輩が尋ねた。


星野先輩は、背は175cmと普通だが、姿勢の良さと相手をまっすぐに見つめる視線、それに歯切れのよい話し方で、とても存在感の大きなひとだ。

とがったあご、決断力のありそうな口元、少しつり上がり気味の目は瞳が明るい茶色で、さらさらした気取らない髪は光の中ではアッシュブラウンに見える。

美形だというだけではなくすべてが特別に見えて、どこでも “代表” になるような印象がある。

それなのに高圧的なところがなく、親しみのこもった笑顔と言葉遣いは、星野先輩の人柄の良さを感じさせる。

当然、女子に人気があって、誕生日とバレンタイン・デイには、生徒会室にいくつものプレゼントが届けられた。



今の役員の任期は6月なかばで終了。

それに向けて、ゴールデンウィーク明けから選挙期間に入る。

決算や生徒総会の準備もあるから、とても忙しくなる。


俺は、生徒会の活動は忙しくてもそれなりに楽しかったから、気心の知れた2年生メンバーと一緒に続けるつもりでいるけれど・・・。


「あ、すみません、あたしはちょっと無理です・・・。」


顔を見合わせていた2年生の一人から、遠慮がちに声が上がる。


木下?

書記だったよな?


「無理そう?」


星野先輩が残念そうに言った。


「はい・・・。親から成績をなんとかしろって言われてて・・・。」


「ああ、木下は医学部志望だっけ?」


「はい・・・、すみません。」


「仕方ないよ。学生だから、勉強第一だからね。」


ということは、残る2年生は俺と富樫の2人?

生徒会役員は会長1人、副会長2人、書記2人、会計2人の合計7人だから、残り5人が入れ替わる・・・?


「立候補って、毎年、どんな状況なんですか?」


俺の質問に、星野先輩は笑った。


「いつも足りなくて、俺たち役員が探しまわるんだよ。去年だって、信任投票だっただろう?」


「そういえば、そうだった。俺のところには前の会長さんが直接来て、『中学で生徒会やってたんだって?』って誘われたんだ。どうして知ってたんだろう?」


首をかしげているのは会計の富樫。


「ははは。いろんなところから情報をもらってるのさ。自分から出てきた生徒なんて、ほとんどいないよ。」


やっぱり面倒だから、やりたいヤツなんていないんだ。

俺だって、自分からっていうわけじゃないけど。


「日向は素直に出てきてくれたから助かったけど。」


「え?」


“素直に” って・・・?


「あれ? 翔に言われたんじゃないの? 生徒会に立候補しろって。」


「翔って、栗原翔・・・ですか?」


「そうだよ。」


星野先輩が栗原と知り合い?

あいつは何も言わなかったけど・・・?


「あれ、知らなかった? 俺、小学校のころ、地域のバスケットチームで翔と一緒だったんだよ。」


「・・・知りませんでした。」


「去年、新入生の名簿にあいつの名前が載ってるのを見て、生徒会をやりそうな知り合いがいないか訊きに行ったら、中学でやってた友達がいるって言って。」


・・・で、ああいうことになったわけか。


「笑いながら、『絶対に立候補させるから安心してください!』なんて言ってたけど、説得されたんじゃなかったんだね。まったく、翔はいつも調子がいいんだから。ははは。」


「あ、いや、それなりには言われたんですけど・・・。」


俺が逃げられないような方法で。


・・・ん?

でも、あいつが風紀委員を買って出たおかげで、俺は委員会と兼務しなくてもよくなったんだ。

副会長の塩田先輩は環境美化委員会でも副委員長をやっていたし、木下は図書委員を引き受けていた。


ちょっと罠にはめられた気分だけど、そういうことなら、あの件については、あいつをうらむのはやめよう。


「みんな、今年の新入生の中に経験者がいるかどうか探してみてくれよ。」


星野先輩が笑顔で言う。


「部活に入って断られるパターンが多いから、部活の勧誘に負けないように頑張らないとね。」


「「「はい。」」」


役員に欠員が出たりしたら、もともと少ない人数でこなしている仕事が忙しくなってしまう。

『応援員募集中!』なんていう貼り紙をしてあるけれど、そんなことを申し出てくる物好きな生徒はいない。星野先輩の魅力を持ってしても。


「でも、先輩。」


富樫が尋ねる。


「俺と日向のほかは、全部1年生になるんですか?」


あ、そうか。

ちょっとやりにくそうだな。


「うーん、2年生を補充したいけど、誰か当てはある?」


2年生3人で顔を見合わせる。

木下も富樫も、そして俺も、誰のことも浮かばない。


「2年生はみんな、部活かバイトで忙しそうな気がします。何もやってない生徒は、生徒会なんて絶対にやりたくなさそうな人みたいな感じが・・・。」


木下が困った表情で言う。

責任感が強い木下は、こんな状況では引退しづらいだろう。


「部活かバイト。そうだよねえ。」


星野先輩が考え込む。


「一人、心当たりがあることはあるんだけど、どうかなあ・・・。」


「え? 誰ですか?」


富樫の質問に、星野先輩は迷った顔をした。


「向こうは俺と知り合いだって知られたくないって言ってるから・・・。生徒会の経験はないけど、しっかり者だから、仕事はできると思うんだけどねえ・・・。」


星野先輩がそう言うなら、かなり優秀なんだろう。


「頼んでみてもらえませんか?」


木下がすがるような目で言う。


「うん・・・、話はしてみるよ。でも、OKするかどうかは、今のところはなんとも言えないな。人前に出るのは嫌だっていうタイプだから。」


「お願いします。俺と日向以外が1年生ばっかりじゃ、なんとなく落ち着かない感じがするし。」


うん。たしかに。


「わかるよ。でも、自分たちでも探してみてくれよ、1年生も2年生も。断られることの方が多いから、候補者はたくさんいないとダメなんだ。」


「わかりました。」


星野先輩のお墨付きの生徒なら、ぜひ生徒会に入ってほしい。

でも、どんなヤツなんだろう?







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