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メガネに願いを  作者: 虹色
第二章 前進
14/103

◆◆ また浮かれてる。 ◆◆


いとこ?


今、 “いとこ” って言った?


つまり、親戚?


じゃあ・・・星野先輩の彼女じゃないんだ・・・。

なんだ・・・。



あのとき、ちゃんと訊けばよかった。

勝手に思い込んでがっかりしたりして、何やってんだ、俺は?


・・・いや、 “がっかり” って、べつに何かを期待してたわけではない・・・けど。



いとこか〜。


お母さんが双子ってことは、星野先輩と似てるのか?

そんなふうに見たことがなかったから分からなかったなあ・・・。


あ。

こっち向いた。


「あの、大丈夫?」


ああ、笑った。

この笑顔だよ。ちょっと恥ずかしそうに。


「うん。ありがとう。」


なんだか久しぶりに見た気がする。

毎日、生徒会室で会ってるのに。


何ともなくてよかった。

ボールが当たって倒れちゃったときは、ほんとうに驚いたけど。



ぽん!



星野先輩?


笑われた?


なんとなく、からかわれているような・・・?

・・・まあ、いいか。



それにしても、『ジャスミン』なんて、大野さんにピッタリな気がする。

たしか、小さい白い花がたくさん咲くんじゃなかったっけ?

いい香りがするって聞いたことがあるけど。

いいなあ。

清楚な大野さんにピッタリだ!


・・・今日は “清楚” って言うよりも、可愛らしい感じだな。

いつもは下ろしている髪を、左右二つに結んで。

いや、その、 “可愛らしい” って、つまり、子どもっぽいっていう意味で、べつに深い意味は。


「日向。試合だぞ。」


「あ、うん。」


最後にもう一度・・・笑ってくれた〜♪

あ〜。

やる気出てきたなあ!


今日の放課後が楽しみだ〜。





全校生徒がうろうろと歩きまわるイベントの最中だったこともあり、大野さんと星野先輩の関係はあっという間に知れ渡った。


「ただの知り合いにしては、仲が良すぎるような気がしてたんだよねー。」


放課後に集まった生徒会室で、塩田先輩が言った。

大野さんは一番はしで、赤い顔をして下を向いている。


「俺は公表しちゃおうって言ってたんだよ。名前も呼びにくいし。だけど、ジャスが嫌だっていうから。」


「ああ、その名前もカッコいいよね。『ジャスミン』なんでしょう?」


塩田先輩が大野さんに向かって言うと、大野さんは少し顔を上げて、みんなを見回した。


「あの、『まりか』が正しいんです・・・。」


「あはははは!」


星野先輩?


「どっちでもいいんだよ。戸籍には漢字で届けるだけだから、どう読んでもいいんだってうちの家族は言ってるよ。『ジャスミン』は母親たちのお祖母ちゃんの名前をもらったんだって。」


じゃあ、大野さんのひいお祖母ちゃんは外国のひとだったのか?

それで星野先輩って髪と目が明るい色なのかな?

ああ!

大野さんの目の色も、先輩と同じだ・・・。


「ねえ、お母さんが双子ってことは星野くんと似てるの? ちょっと、メガネをはずしてみてよ。」


あ。俺も見たい!

いつも、そのメガネが邪魔だと思ってたんだよ!


「いっ、いえ、これははずさないんです!」


そんなにダメなのか・・・。


さっき倒れたときに、もうちょっと近くで・・・いや、そんな場合じゃなかったよな。

あのときはほんとうに驚いた。

たいしたことがなくて、よかったよ。





球技大会2日目。

俺が出ているバスケットは勝ち進んでいて、敗者復活戦が終わってからの試合開始。


「ソフトの応援でも行くか。」


「行く行く! 桃ちゃんの応援しないと!」


一緒にバスケに出ている佐藤の言葉に川村が同意して歩き出す。

とりあえず、俺も。



理系クラスの2年7組は女子が少ない。

3クラスある理系の中でも特に少なくて、27人中6人だ。

この球技大会ではその6人の女子が、男女混合種目のソフトボールに出ていて、バレーとバスケにはエントリーしていない。(隣のクラスは女子が8人で、かけ持ちしながらソフトボールとバレーにエントリーしている。)


川村が言った『桃ちゃん』は浜野桃子といって、6人の中で一番人気の女子。

理系女子のイメージとは違う、なんとなく甘い雰囲気のある女の子だ。

話すときに相手をじっと見る癖があって、それをやられると、男はたいてい怪しい気分になるらしい。俺は平気だけど。


「桃ちゃーん!」


隣で川村が叫んで手を振っている。

それに浜野さんがうなずいたのを見て、満面の笑顔に。



馬鹿だな、こいつ・・・。



浜野さんには、他校生の彼氏がいる。

それはオープンにされていて、帰りに駅で待ち合わせていたりするので、見た生徒も何人もいる。

川村だって、そのことはもちろん知っている。


それでも、彼女に微笑みかけてもらうだけでこんなに幸せな顔をして。

彼女がほかの男のことを好きだってわかっていても。

まあ、川村だけのことじゃないけど。



・・・ん?

あれって大野さん、かな?


隣で試合中?

うちのレフトのうしろにいるってことは、ライトの守備に入ってるのか?

あんなに小さいひとだっけ?

うちのレフトにいる男と比べると、体積が半分くらいしかないみたいに見えるけど。・・・半分は大袈裟か。

今日も髪を二つに結んでる。やっぱり子どもみたいだ。



あれ、グローブを構えてる? ライトフライ?

捕れるのか? 大丈夫か? 打球は? ・・・・捕ったよ! やった!


「日向? 何見てんの?」


あ、佐藤?


「え? あ、いや、べつに。」


無意識に手を握り締めてた・・・。

誰にも気付かれてないか?


・・・意外に上手いんだな。返球もちゃんと・・・でもないか。


「大野〜! ナイスキャッチ〜!」


あの声は・・・やっぱり、栗原。

なんだよ。

大野さんもVサインなんかしちゃって。


そういえば、栗原にもいいところがあるって言ってたけど、まさか・・・あ。

もしかして、俺に気付いた?!


(やったね!)


こっそりと右手の親指を立てて合図。


やった〜。

お辞儀してくれた♪



!!



誰にも見られてないか? 大丈夫か?


自分のクラスの応援をしないでよそのクラスを見ていたなんて、みんなに申し訳ないからな。うん。

でも・・・なんか・・・。



ああ・・・。

俺も馬鹿の一人だ・・・。



ん?

何だよ、馬鹿って?

べつに、大野さんには彼氏がいるわけじゃないし・・・って!



何だよ、彼氏って?!

それに、俺はべつに彼氏に立候補したいわけじゃ・・・あれ?



ちょっと待て。

落ち着け。



大野さんはすごくいい子だ。

それは間違いない。

あの栗原のことまで褒めたりするくらい。


これから一緒に生徒会の役員をやる。

・・・きっと楽しいだろうな・・・じゃなくて!

きっと優秀だろうな、だ!


優秀な書記になったら、いろんな情報をきちんと整理してくれるだろう。

例えば、


「会長。今週のスケジュールは、月曜日が○○で、火曜日が・・・」


なんて・・・ちがーう!

それは “書記” じゃなくて “秘書” だ!



・・・ああ。



やっぱり俺、ほんとうに馬鹿なのかも・・・。







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