第八話
その時だった。
「ははーん、そういうことか」
舞は全てがわかった、といったように得意げな顔を見せる。
「そ、そういうことって、どういうことですか」
「私の藍色の脳細胞が導き出した答えは・・・」
「そこは灰色じゃないんですね。で、その答えとは?」
「お前は今、恋をしているな?」
「してません」
響助は冷静に答えた。本当にしていないからだ。
「本当にか?」
「本当にしてません」
「そうか、私の藍色の脳細胞によると、恋をしているはずだったのだが」
舞は再び考え出した。
「先生、あのもうそろそろいいですか?時間が」
時計は部活が終わってから三十分程経ったことを示していた。
便せんの主はまだ待っているだろうか?
もう帰ってしまっただろうか?
「私の推理では恋をしていて、告白方法を直接するか、手紙にするか迷っているところだと思っていたのだが」
「うっ・・・」
手紙という言葉に無意識に反応してしまう。
「そして、直接言うなら、どこか静かな場所、例えば体育館裏の様な場所に呼び出して言おうとしているな」
「そんなことは、無い、です」
舞はニヤニヤしだした。
響助を追い詰めるのを楽しんでいる。
響助はどうしてこうも真相に近いところを掠めてくるのか疑問に思った。もしかすると、便せんの主とこの教師がつながっているのではないか、とさえ思えた。
「もしくは、逆転の発想で告白された。あるいは、それに近いことをされたのではないか?」
あらためて、この人のすごさを身を持って思い知った。これ以上動揺してしまえば、確実にばれてしまう。そう思った響助は、必死に冷静を装おうとしたが無理だった。
「ぶっはー!せ、先生、あんた、お、おかしいよ!」
そう言い残すと慌てて職員室を飛び出した。
「おいおい、先生に向かってあんたは無いだろ、あんたは」
そうつぶやくと、舞は温くなったコーヒーを飲み干した。