第四話
大きい神秘的な女性の風貌をした像だから。
「女神像」
と、勝手に決め付けているが本当は違うかも知れない。
本当に不思議な像である。
神々しさの中に、その巨体が何か言い知れぬ不気味さを漂わせている。その大きさのため、校舎の窓からもその姿を容易に確認できる。現に今、こうして先生のお話を聞き流しながら眺めている。
ただ、何か重要な欠片が欠けている気がする。何か無くてもいい何かが。
「音無、聞いているのか!」
聞き飽きた女教師の声で、音無響助は現実に戻された。
「はぁ、なんとか」
「本当にお前は集中力に欠けるな。何を考えてたんだ?言ってみろ。どうせ、言えまい。エロいことなんだろう?やれやれ」
女教師−日比木舞は首を振りながら、溜め息をついた。
日比木舞、我等が久音高校吹奏楽部顧問にして音楽教師。年齢は不明、詳細も不明、ほとんど不明なことだらけという謎の人物である。
ただ、すごい人だというのは言動からわかる。性格はよく言えば豪放磊落、悪く言えば大雑把、目茶苦茶、変態、下品と一言では言い表せない。世界は自分を中心に回っていると本気で思っているらしい。そして、よく突然の無茶振りをしては生徒を困らせている。さらに、突然下品なことを口走ったり、女性とは思えない言葉遣いをしたりする。思い立ったら即行動に移し、とんでもないことをしたりする。この前はいきなり、男子生徒が着替えている教室の中に飛び込んでいった。
「最近の男子生徒の体に興味がわいてな」
本当に目茶苦茶だ。
そんな目茶苦茶な人でも確実にわかっていることもある。
見た目だけはとても美人なのだ。町中で歩いていれば誰もが嫌でも眼を引く容姿をしている。黙っていれば女神のような人物なのである。