第三十五話
「何なんですか、これは」
「見ての通り、穴だ」
「穴って、何に使うんですか。いや、本物なんですか?」
「もちろん、本物だ。何に使うかは順を追って説明しよう」
「しょうがないですね。聞けばいいんでしょ、聞けば」
響助は投げやりに答えた。
「素直になってくれて、助かる。説明は一回しかしないから、よーく聞いてくれ。いいか、まず私達は地球人じゃないんだ。アコーストという惑星から来たアコースト人なんだ」
「じゃあ宇宙人ということなんですか?」
「ちょっと違うな。アコーストはこの時空世界には無い。別の時空世界にあってな。所謂、パラレルワールドでの地球の別の姿なんだ。だから、我々と地球人は同じ人型で、似たような文化を持っているのさ」
「ちょっと待ってください。最初から意味不明ですよ!アコーストとかパラレルワールドとか、いきなりそんなこと言われても信じろって言うほうが無理ですよ」
「信じろ。何よりその耳鳴りが一番の証拠なんだ。昨日、お前と京香キスしたろ?そのせいなんだ、耳鳴り」
響助は愕然としていた。
「なんでそのことを知ってるんですか!」
「私にキスしろって指示したのがお姉ちゃんだからね。知ってて当然よ。そして、いい加減認めたらどうなの?全て本当のことよ」
京香が冷静に言う。
「今まで言っていたことは、全て本当のこと?嘘だろ…」
「当然、全て本当のことだ。アコーストも、地球の危機も」
「はあ。どうぞ、説明を続けてください」
響助は溜め息を吐いた。
「よかった。少しは信じる気になっているな、よしよし。それでは説明を続ける。アコーストにはスフィア・ド・エルシエールという冷酷な女帝がいてな、そいつが地球を狙っているんだ」
「地球征服を狙う悪党ですか。なんか、すごく古風ですね。にわかには信じられませんが、本当なんですよね?」
「ああ、その通り、これは本当の話だ。あいつらの力なら、地球など簡単に征服できるだろうな。しかし、それに対抗するために京香と音無、お前達の力が必要なんだ」
「俺と京香さんの力が?」
「京香でいいって言ったじゃない、ったく」