第三十四話
「だーかーらー!本当に地球は狙われてるんだ!」
「先生。お願いですから、外ではそんなこと言わないでくださいね。お迎えが来ますから」
「迎え?ああ、私を敬う者達のものか。やれやれだな」
「違います。黒と白の車です。オプションとしてBGMが付いてきますよ」
響助は信じる木など微塵もなかった。だから、今は耳鳴りを我慢し、聞き流していた。
「どうする、京香?音無君が全く信じてくれないぞ」
「なら、とっとと証拠を突き出せばいいのよ」
「じゃあ、手っ取り早くどっちかが脱ぐしかないな」
「そうね」
えっ、ちょっと待て。今、脱ぐって何だ、脱ぐって。
「よし、じゃんけんで決めるか」
「いいわよ、姉さん。最初はグー!」
「じゃーんけん」
「ポン!」
舞はグーを、京香はパーを出していた。
「ま、負けた…」
「はい、私の勝ち。姉さんが脱いでね」
「くっ、ここで決めねば女が廃る!よし、脱ごう!」
そう言うと舞はシャツのボタンに手をかけ始めた。
「先生、一体何をしてるんですか!」
響助は顔に手を当て、見ないようにした。しかし、そんなことはお構いなしに舞は服を脱いでいく。
「ちょっと、響助何してるのよ!あんたがしっかりと見てなきゃ、意味ないじゃない!よーく見なさい」
京香は手を剥がしにかかってくる。響助はそれに全力で対応する。
「いーやーだ。俺は何も見ないぞ。ていうか、京香さん。そんなキャラでしたっけ!?」
「普段は猫かぶってるのよ。あっ、言っちゃった。もう、いい加減にしなさいよ!」
京香の爪が手に食い込む、思いのほか痛い。
「知りたくなかった真実!俺の幻想が殺された!」
そして、とうとう手を剥がしてしまった。
「どうだ?見えるか、この穴が」
響助の目の前には、舞の白い背中が広がっている。しかし、違和感がある。
そう、そこには黒い穴が空いていた。