第三十三話
「先輩、今日は楽しかったです!」
「そうか、それならよかった。まあ誕生日だからな」
響助先輩が照れながら言う。
「先輩とならどんなことでも楽しいです!」
「なーに、言ってんだよ。お前は」
「ありがとうございます。あんなに素晴らしい物をプレゼントしていただけるなんて」
「別にいいさ、俺とお前の仲だろ?」
「私、嬉しいです」
「そ、そうか。そんなに喜んでもらえるなんて、俺も嬉しいよ」
「私にお礼をさせてください」
「いいよ、お礼なんて」
「いいえ!私、私の大切なものを先輩にあげたいんです」
「心、お前!」
「先輩…」
「心…」
ジリリリリリリリ−
初音心は心地よく目覚めた。
「うーん、よく寝た。ああ、いい夢だった。二度寝すれば続きが見れるかなって、今日は大事な日じゃない!早く準備しなきゃ!」
お気に入りの服に身を包み、先輩に会いに行く支度を進める。そして、家を出る。そうだ、一応先輩に電話をしてみよう。
ピリリリリ−
先輩は出ない、きっとまだ寝ているのだろう。去年はそうだった。どうやって、起こしてあげようか。
その様子を影から見ているモノがいた。
「あれが『心臓』か…」
モノは心に近づいていく。
「すみません」
「はい、何でしょうか?」
「道を聞きたいんだけど、いいかな?」