第三十二話
音無響助は再び目覚めた。そこは全く知らない場所だった。
「どこだよ、ここは」
自らが横になっていたベッド以外に何もない白い部屋。
どこか学校の保健室を思い出させる。
「気がついたか、音無?」
再び聞き覚えのある声が部屋に響く。目の前には黒ずくめの人物が立っている。その人物が仮面を外す、すると見慣れた顔がそこにあった。
日比木舞。我等が吹奏楽部顧問が立っている。
「どうして、どうして先生が?」
「理由?理由は簡単。地球を救うためさ」
まただ。またこんな話だ。こんな話?まさか−。
「だーかーらー、言ってるじゃない?この地球を救うためだって」
日比木京香が白い部屋に入ってきた。頭が混乱している。何なんだよ、これは。新手のドッキリか何かか?しかし、二人は真剣そのものである。
「さーて、どこから説明するかな」
「私達のことじゃない?」
「そうだな。おっと、その前に聞くことがあった。耳鳴りはどうなった?」
響助は呆気にとられていた。
「音無!耳鳴りはどうなった!」
舞が声をはって聞く。
「えぇ、ああ。はい、大分治まりました」
「それはよかった。薬が効いたようだ」
「で、姉さん。どこから説明するの?」
「やはり、我々のことからだろう」
「でも、楽機のこととか、女神像のこととか」
「説明することは山のようだな」
響助は一人取り残されていた。
「あの一体何の話をしてるんですか?」
「待て、今どこから話すか相談している」
「そうそう、がっつかない、がっつかない」
二人は何を話しているんだろうか、楽器?女神像?そして、地球の危機?
わからない。
全くもってわからない。
「よし決めたぞ。そこから話そう」
「やっぱりそうね。それがいいわ」
「いいか音無、地球は狙われている」