第三十一話
ものすごい頭痛と耳鳴りと共に音無響助は目覚めた。
「何なんだよ、この音は!」
おかしい。こんな音、今までに一度も聞いたことが無かった。
「この音は一体何なんだよ。頭も痛いし、風邪か」
耳鳴りはどんどん強くなっていく。その時、人の声らしきものが聞こえた。
「説明しよう!」
はっきりとした女性の声が聞こえた。
「あれ。ついに幻聴までするようになったのか?」
「幻聴ではない!ここにいる」
一つしかない響助の部屋のドアのところに、全身黒ずくめの顔を仮面で覆い隠した怪しい三人組がいた。
「どど、どうやってこの家に忍び込んだんだ!」
「この世界の鍵など我々にとっては無いも同然。普通に開けて入っただけだ!」
凛々しい声で応じる女性、この声どこかで聞いた覚えがある。どこだったか。
「この家には金は無いぞ」
「そんなことは知っている」
「じゃあ、何が目的なんだよ」
「今、お前は激しい頭痛と耳鳴りで苦しんでいるな?」
「なんで耳鳴りのことを−」
「知りたいか?知りたいのならば、私達について来い」
「いいや、別に。放っておけば治るさ。ついていく気はないね」
「強情だな。しょうがない、やれ」
女性が合図をすると、二人の黒ずくめの人物が近づいて来る。しかし、響助は頭痛と耳鳴りのせいで自由がきかず、すぐに捕まってしまった。
「はなせ!どこへつれていく気だ!」
「少しうるさいな、黙らせろ」
「了解」
黒ずくめの一人がポケットから音叉を取り出す。そして、軽く鳴らすと響助の意識は薄れていった。
「離せ−」
響助は黒ずくめの三人組に連れ去られていく。
ピリリリリ−
誰もいない響助の部屋に携帯の着信音が寂しく響いた。