第三十話
スフィア・ド・エルシエールは勝ち誇った様な顔で青い球体を眺めていた。スフィアのもとには三人の影が集まっていた。
「ついにこの星が私の物になるときが来たわ。そうなんでしょ、ウィーン?」
「はい、ようやくローレライの『心臓』になりうる人間を見つけました」
ウィーンが答える。
「そして、簡易型転送装置の最終調整も終了しました。」
スフィアはニヤリと笑うと、ゲドールに問うた。
「どうだ、ゲドール。準備はいいか?」
「ついに俺の出番ですね!当然、準備も何から何まで整っております」
「そうか、それは頼もしいな」
「はい。全てお任せ下さい、このゲドール・マータに」
ゲドールは急に真剣な顔つきになり答えた。
「そして、ライラ。どうだ調子は?」
「はい、私もラプソディーヴァも共に良好であります」
「ライラ、お前には向こう側への道が開かれたらすぐに、あの島に跳んでほしい」
「はっ、あの島とは?」
「ローレライの眠っている小さな島さ。あそこにはレジスタンスの奴らがいるんだ」
「レジスタンス!そうでしたね、一緒に跳びましたね」
「だから、ライラ。お前にはレジスタンスを潰しに行ってもらいたい。できるか?」
「もちろん、スフィア様のためならば」
「うん、三人ともいい返事だ。それでは始めようか、私のための調律を!」
「はっ」
スフィアの呼び掛けに応じる三人。
「それでは転送準備に取り掛かりたいと思います。ゲドール、これだ」
ウィーンがそう言うと、人一人入れそうなカプセルが現れた。
「これに乗ればいいのか?」
ゲドールがカプセルに乗り込む。
「そうだ。では早速、転送を始める」
ゲドールがカプセルに乗り込んだのを確認すると、ウィーンは音叉を取り出し大きく振った。するとカプセルが振動を始め、あっという間に消えてなくなった。
「転送完了です」
「それで『心臓』はどうなっている?」
「そちらのほうはこちらをご覧下さい」
女神の目には、小柄な少女の姿が映っていた。