第三話
しかし、なんとべたな場所を選んだものだ。
体育館裏。
そこに呼び出されて、されることと言えば、告白か、かつあげ、決闘くらいなものだ。
まるで漫画だ。
そのせいで今日の練習は、全く身に入らなかった。
あぁ、足取りが重い。
まるで十三階段を上る死刑囚の気分だ。
あぁ、もうすぐ着いてしまう。
嫌だ。
嫌だ。
「先輩、何を惚けているんです!音楽室はもう、すぐそこなんですよ!」
「あっ、そうなの?」
こうして、俺は音楽室に着いてしまった。
「音無!初音!遅いぞ!」
重たい扉を開けると同時に大きな怒鳴り声が教室に響き渡った。
ここはのどかな島だ。
小、中、高と一つずつしかない。海には魚が多く、緑も豊かなため、漁業、農業ともに盛んである。街には小さな商店街があるくらいで、島はほとんど自給自足で成り立っている。島民はほぼ顔見知りで家族のようである。
こんな島にも、ただ一つ変わっているものがある。
女神像だ。
巨大な女性の像が海に突き刺さっている。誰が何のために作ったのか、いつからあったのかもわからない。
存在そのものが謎なのだ。
だが、島民は
「女神の加護のある島 久音島」
と称して観光材料として利用している。