第二十六話
入口に端正な顔立ちをした女が立っている。
「どうして、そんな重要な任務をこのようなモノに任せるのです!」
女はスフィアに近づくと、こう言った。
「次の任務の成否で、向こう側の世界を手に入れられるかどうかがわかれてくるのですよ!このような人形師にそんな大役が務まるとは到底思えません。ここはこの私、ライラ・エル・ジェインにお任せを!」
ライラはゲドールのことを信用していなかったのだ。
スフィアは答えた。
「お前の言い分はわかった。それでも今回はゲドールが適任なのだ。なあ、ウィーンよ」
「はい。今回は向こう側に行き、女神を目覚めさせることが重要となります」
「そんなこと私にもできよう!」
「確かに貴女にもできるかもしれませんが、女神を目覚めさせるということがどういうことか、わかっているのですか?」
「ああ、知っている。女神に相応しい生贄を用意すればいいのだろう!」
「その通りです。これでおわかりいただけましたか?」
「あ−」
ライラは言葉を失った。なぜ自分ではなく、ゲドールが選ばれたのか理解したからだ。
「生贄を用意するのは、俺のほうが得意だっていうことさ。材料を集めることよりも、簡単だね」
ゲドールはカタカタと笑いながら勝ち誇ったように言った。
「ライラ、安心しろ。お前にもすぐ仕事ができる」
スフィアはライラを納得させるように言った。
「はっ、というと?」
「向こう側への道が完成したらすぐ、調律を始める」
「調律、ですか」
「ああ、あの星はきれいだ。だが、音が気に入らない。だから、私好みに調律するのだ」
スフィアは新しい青い球体を手に取り、眺めている。
「あの時、偶然見つけた向こう側の世界、最初はあまり興味は無かったんだがね。邪魔な奴らが向こう側に行ったことで、この世界はもう完全に私の物になってしまったわけだよ。すると次の目標が欲しくなってくるわけさ。そこにこんなうってつけの場所があるわけだよ。私の物にしたい。ああ、欲しいなあ」
「ならば私達は貴女のお手伝いをするだけです」
三人の幹部はスフィアの前で再び忠誠を誓い合った。