第二十二話
「どうして先輩は、響助先輩は私のことを真面目に取り合ってくれないのだろう」
初音心は思った。
私と先輩はご近所ということもあって、幼馴染みで兄と妹の様な関係だった。思えばいつも一緒にいた。お風呂に一緒に入ったり、かくれんぼの時も一緒に隠れたり、森林に二人だけの秘密基地を作ったり、泥遊びをして一緒に怒られたり、喧嘩しあったこともある。楽しいときも、悲しいときも、どんなときも一緒だった。どの思い出も私の宝物だ。
しかし、時とは残酷なものだ。
私が小学六年生の時に、先輩は中学一年生になる。
私が中学三年生の時に、先輩は高校一年生になる。
どんどん離されていく。思い出も色あせていく。一人で取り残されていく。先輩の背中がどんどん遠くなっていく。私はそれを追いかける。だけど、決して追いつけない。どうしたらこの想いを気づいてもらえるのだろうか。
しかし、伝えるのも怖い。もし、伝えたとしても受け取ってもらえずに、今の関係が壊れてしまったら、きっと私は耐えられないだろう。
でも、あの日から抱いていたこの想いを伝えたい。
ある夏の日、私達は山で遊んでいた。
近所にいる数人の子供達が集まってかくれんぼをしていた。
「1、2、3、4、5、・・・もういいかい」
「まーだだよ」
「1、2、3、・・・もういいかい」
「もういいよ」
木々の間に声が反射している。
子供達のするかくれんぼなので、できることなど限られていて、鬼がどんどん替わっていく。私も鬼をやったし、先輩も鬼をやった。木陰に隠れている子供達を見つけては鬼を交代し、数を数えた。
そのうち夕日も暮れてきた。
次を最後にしようと先輩が鬼になる。私はこの楽しい時間をもっとつづけていたいとおもったのか、絶対に見つからない場所を探した。木々をかきわけて、ひたすら森の奥へと進んだ。
すると、一本の大きな木を見つけた。