第十七話
初音心は体育館裏が見える木の茂みに隠れていた。そして、そこに立つ京香の姿を確認した。
これからなにが起こるのか、大体の予想はついた。
向こうから響助先輩がやってくる。そして、京香はこんなことを言うのだろう。
「響助、前から貴方のことが好きだったの」
それに対して先輩は当然の様に、
「俺も前から京香のことが好きだったんだ!付き合ってくれ!」
「本当に?私嬉しい!」
響助に思わず抱き着く京香。そうして、手を取り合って帰っていく二人。
結果、私は一人取り残され、トボトボと帰ることに!
嫌!そんなの絶対、嫌!
しかし、ここまではあくまで想像上でのことに過ぎないのだ。そうしてこんなことを妄想している間に、本当に先輩がやって来た。
何か二人で話している。しかし、よく聞こえない。何を話しているのだろうか?気になるが確かめる方法は無い。ああ、もどかしい。ああ、気になる。
でも、どうしようもないのだ。
そして、事態は急変するのであった。
「二人で一緒に−、欲しいの!」
京香のよく響く声がようやく聞こえたが、はっきりとは聞こえない。しかし、何かを一緒にして欲しい、ということは聞こえた。
二人で一緒に?何をするんだろう?と思った瞬間、心の思考は止まった。
二人が体育館裏でキスをしたのだ。
唖然とした。信じられない。いや、信じたくない。だが、事実だ。受け入れるしかない。
心の中で何かが壊れる音がした。
全ては先輩の自由である。私には止める権利は無い。
でも先輩、何だか寂しいです。何ででしょうね?