第十四話
響助は「今日は大変な一日だったな」と楽器を丁寧に分解し、布で掃除をしながら思った。
そして、気づいた。
明日は心の誕生日だと。
幼い頃から心とは家族のつき合いがあり、お互いの誕生日は、二人の家族でまとまって祝っていた。
しかし、父親の転勤の都合により、響助が一人で島に残されてからは大変なことがあったなあ、と思い出した。
ある日の朝、寝ている横が異様に温かい。
おかしい。
響助は違和感を感じ、目覚めた。そして、横を向いた。
パジャマ姿の心が横で寝ていた。
言葉を失った。
そして、心が響助に手を伸ばしたところで意識を取り戻し、
「何をやってるんだお前は!」
朝っぱらから大声で叫んでしまった。
「あ、おはようございますー」
「おはようございますー、じゃねーよ!なんで、お前がここで寝てるんだよ!どうやって入ってきたんだよ!」
「あっ、先輩知らなかったんですか?先輩が一人暮らしになるということで、合い鍵をもらってたんですよ?そして、今日は何の日か知ってますか?」
「知るかよ!」
「私の誕生日でしたー!おめでとう、私」
「いいから、でていけー!」
それからは散々だった。変な噂が島中に流れたのだ。
あれは嫌な事件だった。今年はそんなことの無いように、しっかりと上のかんぬきも閉めておこう。
そして、楽器もきれいに片付いた。いよいよだ。いよいよ、体育館裏に行かなければならない。楽器を棚にしまう。そして、響助は音楽室を後にした。
廊下には何の気配も感じない。冷たい物の気配だけを感じる。
「はあ、やれやれだよ。全く」