第十話
「今、この地球は狙われている」
また、とんでもないことをさらりと言われた。背中の穴だけでもまだ信じられないのに、そんなSFみたいなことを言われても頭の処理が追いつかない。
「私達をこの地球に追いやった奴らが、次はこの地球を我が物にしようとしてるんだ」
女帝 スフィア・ド・エルシエール
「私があちらの星にいた頃の治政者でね。それはもうひどいものだったよ。逆らうものは即刻死刑、一般の人々には無理な課税や、課題を押し付ける。それでも、私達はわずかな戦力を用いて、レジスタンスとして戦ったが、相手が相手なだけあって、努力もむなしく、圧倒的な力の差の前に敗れ、私達は散り散りになり、その一部がこの地球にやってきて、この島に住んでいるというわけだ。そして、一時の平穏を得たというわけだが、ついに冷酷な女帝の魔の手がこの地球に伸びてきているんだ。最近、この辺りで不振な動きを感知してな。そこでお前にしかできないことをやってもらいたいんだ」
「ちょっと待ってよ、お姉ちゃん!私、全然意味がわからないんだけど!地球人じゃないってい言うなら、私達は何人だって言うのよ!」
彼女の頭は完全に混乱していた。
「アコースト、それが元々住んでいた惑星の名前だ。だから、アコースト人だな」
対して姉は冷静にそれに対応する。
「・・・で、この穴は何なのよ」
「その穴は大事なところだからな、大切にしろよ。命と心に関わるからな」
「命と心?」
「あぁ、我々の命は心でな。そして、その穴を通して心エネルギーを動力に替えたりして、様々なことに利用してきたんだ」
彼女は理解できなかった。今までの概念を全て覆すような発言に唖然としていた。
「でも大丈夫だ、心は回復するからな。それに今は理解できなくても、すぐに理解できるようになる」
そう姉は告げると彼女をある場所へと誘った。
そして、全てを理解せざるを得ないモノを見せられた。こうして、絶対的な証拠を見せられてしまったからには信じない訳にはいかない。
もうこうなったら、やるしかない。
そう改めて決意し直すと彼女−日比木京香は楽器を閉まった。