第一話
それは少年と少女、二人が織り成す心に響く交響曲。
休日、人が少ない校舎の一角にあるトイレの一室、一人の男子生徒が閉じこもっていた。
彼は溜め息をつきながら一人、ぼそぼそとつぶやいている。
「どうして、こんなものを渡されたんだ。俺、この人になんかしたか?思い当たる節は無いはず。いや、あるかも、たくさんあるな」
右手でお腹をさすり、もう片方の手で淡いピンクの小さな便せんをもてあそぶ。
「ひょっとして、あれか?前々から俺に恨みでもあんのか?あってもおかしくないんだよな、これが。だったら教えてくれよ。しっかり爆弾処理したのによ!」
さらに深い溜め息を吐く。
「あー、腹痛い。俺、いったいどうなるよ?誰か、助けてくれよ。あっ、痛っ」
突然、彼の頭上からかわいらしい女の子物のスリッパが降ってきて、頭にクリーンヒットした。彼は憤りながら、そのスリッパを握り締めた。
「助けてくれとは言ったが、誰もこんなものをよこせとは言ってないぞ!このクソ後輩!」
「ノックしてもーしもーし、誰か入ってるんですかー?」
男子生徒のこもる個室の前に、ニコニコと笑っている少女が一人。
「ドアの鍵かかってんのわかるだろ!第一、ここは女人禁制。触れ得ざる聖域だぞ!」
「あっ、いたんですか。こりゃ、失敬。でも、こんなところを勝手に独占して聖域にしないでくださいー」
「俺は男で、お前は女!そして、ここは男子トイレだ。こんなところに来たら、あんなものや、こんなものが見えるかもしれないんだ。お前はもっと恥じらいを持て!」
「わかってますって、そんなこと。百も承知の上ですー。今、ここには私達二人だけ、それに先輩のならどんなモノでも受け入れる覚悟はできています!そうだ、いい機会です。イけるところまでイっちゃいます?イっちゃいましょう!」
二人の問答は大きくなっていく。
少女は扉の上に手をかけ、よじ登って中へ侵入しようとする。
少年はそれに気づき、急いで便せんをポケットに突っ込み、扉の鍵を開け、握り締めていたスリッパを便器の中に放り込み、思いきり扉を開けて個室を出た。
少女は扉にへばりついたままだ。
「安心しろよ、何もしないし、何もしてないから。じゃ、先に行ってるぞ」
「何もしてない?はて、何のことですか?」
少女は扉から飛び離れ、個室の中を覗き込む。
「先輩!なんてことをしてくれたんですかー!何もしてないって、そういうことですか!用を足してはいない、ということですね!じゃあ、先輩はここでなにをしていたんですか?って、待ってくださいよー」
そう言うと、急いでトイレを後にした。
初めまして、十六夜という者です。
これは暇人が書いた拙い小説ですが、コメントしていただけると幸いです。
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それでは、また次話でお会いしましょう。
−続−