鳥籠の鳥と妄想少女
私は鳥を飼っている。
その鳥は飼い主である私をことごとく無視する、悪い子だった。
無視するといっても、不機嫌そうに私から顔を逸らすとか、煩わしそうに私の声を無視するだとか、そういう類のものじゃない。
あの鳥は、私のことが見えていないのだ。
私は毎晩決まってその鳥が閉じ込められている檻の前で立ち尽くす。
鳥は高貴だった。何色なのかは分からないけども、どんな種類なのかも分からないけども、鳥はとても気高く美しかった。
どんな鳥だったのだろう。と首を傾げ、不意にあの鳥はかわいそうだと思った。
鳥は翼を持っていた。けれども、私と鳥を隔てる鉄格子のせいで飛び立てないでいた。
鳥は諦めていた。いや、もしかしたら諦めていないのかもしれないが、私から見た鳥はいつも無気力に何を見ているのかも分からない目で虚空に彷徨わせていた。
あの鳥はどんな鳥なのだろう。
あの鳥はかわいそうだ。
私が鳥のことをよく知ろうと思うたびに、私に飼われている鳥を気の毒に思う。
鉄格子に手をかける。私は、この檻の扉を開けたいと思った。
だが、檻には出入りするための扉が無い。鍵も無い。どうしようもなかった。
私が飼っている鳥は、何色なのだろう。
知りたい。知りたいけども、あの鳥にとっては。
鳥を見つめる私と、目が合った。
輝く 色の目が、燻る 色の翼が、濁る 色の が、 色の心が、
鳥は、『彼』は笑った。
私はそれを綺麗だと、美しいと思った。
そして私は唐突に現実を理解した。
それは、私が感じたこの言葉は、夢から覚めてしまえば全て嘘になる。
私はそれが悲しくて、涙した。
知りたい『人』のことを知りたいと思う。けれどそれは『彼』にとっては迷惑なだけの。
結局は私の理想像。本来は。
叶わない思いも煩わしいだけの気持ちも、『彼』はきっと払いのけてしまうのだろう。
そんなことを考えて、私は自分が夢から覚めていく冷え冷えとした感覚を舐めた。
決して自分のものにならない自由な鳥。
自分のものにならないから飼う少女。
そんな話。




